【特集】社会価値創造と事業成長を考える
─ 目指すのは社会的価値創造と経済的価値向上の橋渡し、サイバーエージェントが取り組むGX事業(本記事)
─ 事業成長と社会的価値の創出は、両輪。パナソニック コネクトが取り組むカルチャー改革の現在地
─ DE&I推進はビジネスにどう貢献するか 「P&Gアライ育成研修」が拓く可能性
─ 事業だけでは測れない統合的な企業価値が問われる時代に。電通の「統合諸表」が導くのは企業の未来設計図
─ 生理用品も会社の備品に。花王が社会巻き込み型で展開する「職場のロリエ」とは
─ 環境と生活者双方の利益を追求する「い・ろ・は・す」のブランド戦略
─ チューリッヒが挑み続ける「地球環境への取り組みと社会への働きかけ」
─ デジタル広告の価値向上と社会貢献活動を実現するドネーションアドとは?
─ 誰も取り残さないブランド体験がイノベーションを生む。博報堂が掲げる「ブランド・アクセシビリティ」とは
リテールメディアからGXへの広がり
――サイバーエージェントでは2023年1月に小売GXセンターを新設されています。具体的に、どのようなニーズや課題解決を目指す部署なのでしょうか?
藤田:まずは小売GXセンターの立ち上げの背景からご説明します。私が統括する協業リテールメディアという部署で小売GXセンターがスタートしました。リテールメディアという言葉は最近キーワードとして頻出していますが、私たちは約6年前からこの事業に取り組んできました。
小売業様の店舗やアプリ、あるいはメールマガジンやLINE公式アカウント等のお客様接点をメディアとして見立て、様々なコミュニケーションを取る中で、一部をメーカー様にスポンサードいただくことで収益を上げていくというモデルです。広告の販売をゴールにしてきた一方で、小売業様との関係性が深まるにつれ、広告事業以外のご相談をいただく機会が非常に増えています。
たとえば、従業員の皆さんのデジタルリテラシーを高めたい、自社内のDXを推進したいなどです。その中の一つにGXに関してのご相談もあります。特に昨今では電気代が高騰しているため、そのコストを抑制して他の投資に回せないかといったご相談が増えてきた背景があります。
我々はコスト削減を主力としてやきた会社ではありませんが、サイバーエージェントのアセットを改めて見返すと、小売業の方々の電気代削減、ひいてはCO2をはじめとした温室効果ガスの削減達成に対してできることがあるのではないかと考えました。たとえば、ロボット学の世界的権威である石黒浩先生が率いる大阪大学石黒研究室と一緒にロボットの研究をしていたり、自社内ではセンサーを使った物体認知や温度検知といったテクノロジーを活用していたりしています。そこで、GXの取り組みを開始した次第です。
進藤:GXはCO2排出量が多い製造業やメーカーを中心に動きが活発です。産業界のその流れを受け、小売業は何ができるだろうか?と各社が検討している段階です。事例もほとんどない中で顧客接点に強みを持つ我々にご相談いただくということは、顧客接点とGXをどう絡めるかという大きなテーマをお持ちなのだと感じます。
販促に影響せずサイネージの消費電力を抑える
――サービスの第1弾として「ミライネージ for Green」を発表されています。こちらはどのようなサービスですか?
進藤:こちらは電気代削減の文脈が大きいサービスです。店舗でディスプレイを点灯し続けるサイネージの消費電気量を抑えるには、電源を切る必要があります。しかし、それでは販促効果に影響を及ぼしてしまいます。そこで、POSデータを分析して、機会損失を避けられるタイミングだけ照明が切れるようにスケジューリングする機能です。電力の需給の逼迫による節電といった対応が迫られた際にもご利用いただけるので、小売様の安心感にもつながっていると思います。