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第107号(2024年11月号)
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スマートな撮影ディレクションの第一歩 写真のクオリティを握る「企画」の立てかたとは

企画を考えるときの“アクションとプロセス”

 企画には、もうひとつ大切なポイントがあります。それは、考えた内容を明文化しておくこと。自分の中で認識しているだけであったり漠然とイメージするのではなく、言葉にすることでフォトグラファーをはじめとする撮影チームのメンバー全員で共通認識をもちやすくなります。

 先ほどご紹介したコンセントのメンバーが実際に経験したエピソードにもありましたが、撮影ビギナーのつまずきの多くは、「フォトグラファーとの意思疎通」や「撮れ高(撮影した写真が想定通りのクオリティか)の現場判断」にあります。写真は、アート作品のように感覚やセンスでディレクションしようと考えがちですが、そんなことはありません。目的や方針をふまえてコミュニケーションをすると、ディレクションの意図も伝わりやすくなりますし判断軸がブレることも少なくなります。

 では、撮影チーム全員が納得でき、共通認識がもてるような方針を立てるためには、何をどのように考えていけば良いのでしょうか。コンセントのメンバーが実践していることを3つに分けて共有します。

1.ユーザー目線で撮影テーマを理解する

 どんな写真にするかという「絵」を考える前に、ユーザーの立場になって撮影テーマへの理解を深めます。具体的には、ターゲット層に近い人のSNSをみたり、実際にヒアリングをしたりして、ターゲットとなる人のライフスタイル、趣味嗜好、撮影テーマに対するニーズやそのコンテンツを目にするシチュエーションなどを理解します。

 また自社のコンテンツとしてではなく、クライアントとの仕事の中で撮影する場合は、クライアントの企業情報、撮影テーマとなる製品・サービスの情報も把握しておくようにします。マーケティング戦略資料や製品情報はもちろん、クライアント側の担当者にヒアリングをするなどして理解を深めていきましょう。

 このリサーチをしっかり行うと、「企画に必要な5つのこと&検討のためのチェックリスト」で紹介した 5項目のうちの1〜4項目は、おのずと定まってきます。

2.場面やストーリー設定を考える

 リサーチを通して理解が深まったら、それをもとにどのような「絵」にするかを考えていきます。

 ここからは少し、事実情報から飛躍して想像力を膨らませる必要があるので、難しく感じるかもしれません。そこでオススメなのが、撮影する写真に場面やストーリーを設定して考える方法です。登場する主人公のキャラクターや描く場面、できごとを時系列にし、具体的なストーリーにしてみてください。

 この方法のメリットは、アイディアや表現の幅が格段に広げやすくなること。「この主人公の性格なら、こんな場面がありそう」「その次にこんな行動をしそう」など、連想ゲームのようにいろいろな撮影パターンを出しやすくなります。そして複数カットを撮影する場合でも、「この主人公ならこんな服を着て、こんな小物が似合いそう」など、細部まで演出を行き渡らせることにより、全体で統一した世界観をつくりやすくなるでしょう。

 企業でウェブサイトや広報誌などの制作を担当しており、デザイナーやパートナー企業に撮影を依頼する立場の方は、依頼相手のアイディアが広がりやすくなるよう、なるべく多くの情報を共有すると良いでしょう。製品やメディアに関する情報はもちろん、ちょっとした課題感やあまり変更したくない点など、些細なことも発想のタネにつながることがあります。

3.参考イメージを集めて議論する

 最終的には写真を撮影するため、言葉だけでなく、目指す絵に近い参考写真を収集しながら方向性を考えることも大切です。さまざまな参考写真を見ることで、自分の中で撮りたいイメージが具体的に定まっていきますし、集めたものを見ながら撮影チームで話し合えば、言葉だけでは補えない世界観やトーンの詳細をすり合わせることができます。

 具体的に、まずは参考になりそうな写真をたくさん集めてみます(著作権侵害にならないよう、使用目的を確認したうえで行いましょう)。ウェブ上の画像や雑誌、SNSなど、メディアは何でもかまいません。肝心なのは、写真を集めたそのあと。集めたものを自分なりに分類してみたり、ラベリングしてみたり、その写真が良いと思った理由などを考えて分析してみます。

 ただ、集めたものを眺めるだけでは意味がありません。分析せずに何となくのイメージで進めてしまうと、いざフォトグラファーに撮影意図を説明しようとしたときに明確に伝えられず、撮影現場で「何だか違う……」という状態に陥ってしまいます。

 さらに大切なのは、参考として集めた写真をメンバーと一緒に見ながら撮りたいイメージをすり合わせること。口頭説明だけで済ませたり、参考イメージを見せたりするだけではお互いに想像していることのズレにも気づくことができず、撮影が上手くいかない要因にもなりかねません。

 撮影には、フォトグラファー、デザイナー、ディレクター、企業担当者など、立場の異なる人が多く関わることになります。そのようなメンバー全員で議論する過程そのものが、相互理解や目指すゴールを共有することにつながります。結果としてそれが、お互いが対等な関係の中で、個々の専門性を生かしながら良いクリエイティブを生みだすためのチームづくりにもつながるのです。

この記事の続きは、「CreatorZine」に掲載しています。 こちらよりご覧ください。

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MarkeZine(マーケジン)
2023/07/14 08:00 https://markezine.jp/article/detail/42776

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