グローバル視点もRaaS事業の魅力
RaaS企業は、各ブランド企業の有するオンラインユーザーに対して「再販機能」をAPIで提供する。すると、マイアカウントに蓄積されていたユーザーの購買履歴=マイデータは、再販が可能な「オンライン・クローゼット」に変身する。その中にニセモノは存在しない。
RaaSがブランド企業に提供するBtoBサービスには、このような単なるテックだけではなく、細かい労働プロセスの集約化も含まれる。たとえば、再販商品の下取り、サイト構築とメンテナンス、顧客データの収集・分析・報告などを可能にした上で、「ブランド再販プログラム」として数十のグローバル再販マーケット・プレイスへ商品を提供する。一見すると、かなり労働集約的な作業だが、店舗起点で買い取るリセール事業よりも、ブランドと倉庫(オンライン)起点で構築されるので、集約効率がはるかに高い。
旧来のリセール事業モデルでは、実店舗で商品を買い取り、仕入れ、在庫管理から販売までを行うという方法が主流だ。この場合のKPIは「店舗1平方フィートあたりの売上高」や「ECのクリック数」で、これを稼ぐために一等地に旗艦店を開設したり、CPM効率の良いオンライン広告を出したりして、店舗とECの両輪を維持する必要がある。店舗を起点にするというのは、多額の資本と店舗運営費を要する方法なのだ。近年のIPO企業を見ても、店舗や展示と連動する企業は価値を落とし続けている(図表1)。

RaaSは、リセール市場経由で「ブランドの新たなファン」をグローバルに膨らませる可能性を持つ。これがRaaS事業者とブランド企業をトキメかせている、デジタルならではの面白さだろう。BtoCの視点だけではない、BtoBの視点が「循環エコノミー」を作っている点を強調したい。
※ 出典:ThredsUP社『Resale Report 2023』より、1ドル=130円で計算