3つのステップで「ついやりたくなる」を作る
これらの要素を実際にビジネスで活用していくにはどうすればよいのでしょうか。事例から要素分解できたとしても、実際にゼロからアイデアを創出するためには発想力が求められます。少しでも難易度を下げるために、アイデア創出フレームワークの1つをご紹介します。ここでは、自身の経験を活用したアナロジー(類推)の考え方を用います。
手順としては以下の3つのステップです。
Step1:促したい行動を定義する
Step2:これまでの人生で「やりたくなってしまった」体験を列挙してみる
Step3:促したい行動と「やりたくなってしまった体験」を組み合わせてみる
Step1は、第2回で解説した通り「Who:誰が」「When:どのシーンで」「Which:どの選択肢で」「Goal:何を選ぶべきか」の粒度で設定します。ここでは「自社の従業員がトイレの個室を使い終わった時に、便座の蓋を開けたままにする/閉めるという選択肢から、閉める行動を選択」することを促すケースを考え、アイデアを出していきます。
Step2では、たとえば「床が透明な所があると上に立ちたくなる(期待×好奇心)」「テレビ番組のクイズに答えたくなる(類推×不協和)」などがあります。Step3は、Step1の促したい行動とStep2のやりたくなってしまった体験を組み合わせることで課題を解決できそうなアイデアを出します。
たとえば「トイレの蓋を閉める」「クイズ」を組み合わせると「内ドアにクイズを書いて、正解は蓋の表」と書くと立ち上がる際に蓋を閉めて正解を確認したくなる、といったアイデアが考えられます。

フレームワークで意外性のあるアイデアも創出!
別の具体的な例としては、Step1で「お菓子を紹介する看板広告の横を通り過ぎる時に、注視する/注視しないという選択肢から、注視する行動を選択する」と定義します。Step2で「花屋を通り過ぎる時に香りを嗅ぎたくなる(期待×好奇心)」「ボタンがあると押したくなる(類推×好奇心)」などを挙げます。
Step1で「看板広告に注視する」「匂いを嗅ぐ」を組み合わせると「お菓子の匂いがする看板広告を掲載する」ことで香りのする方を注視する、といったアイデアが浮かびます。

Step1・2を組み合わせてアイデアが思いつかない場合は、Step2を増やしていきます。誰が経験したかは関係ないため、チームで取り組むのも良いでしょう。この方法で、一見促したい行動とは無関係のものと組み合わされる意外性や、他の方も同じようにやりたくなったことがある場合には共感性といった要素も満たしたアイデアを出すことができます。
ついやりたくなってしまう、意識的な瞬間UXのアイデアを出す方法として、フレームワークシートとこの3つのステップをぜひ活用してみてください。
