※本記事は、2023年8月刊行の『MarkeZine』(雑誌)92号に掲載したものです。
【特集】社会価値創造と事業成長を考える
─ 目指すのは社会的価値創造と経済的価値向上の橋渡し、サイバーエージェントが取り組むGX事業
─ 事業成長と社会的価値の創出は、両輪。パナソニック コネクトが取り組むカルチャー改革の現在地
─ DE&I推進はビジネスにどう貢献するか 「P&Gアライ育成研修」が拓く可能性
─ 事業だけでは測れない統合的な企業価値が問われる時代に。電通の「統合諸表」が導くのは企業の未来設計図
─ 生理用品も会社の備品に。花王が社会巻き込み型で展開する「職場のロリエ」とは
─ 環境と生活者双方の利益を追求する「い・ろ・は・す」のブランド戦略
─ チューリッヒが挑み続ける「地球環境への取り組みと社会への働きかけ」
─ デジタル広告の価値向上と社会貢献活動を実現するドネーションアドとは?(本記事)
─ 誰も取り残さないブランド体験がイノベーションを生む。博報堂が掲げる「ブランド・アクセシビリティ」とは
広告視聴をポジティブで意味のあるものに
──博報堂DYメディアパートナーズでは2021年11月より、ドネーションアド「Good-Loop」の日本市場における独占提供を開始されました。同ソリューションの概要と狙いをうかがえますか。
山﨑:Good-Loopは、デジタル広告を活用した寄付型広告ソリューションです。イギリスのスタートアップ企業であるGood-Loop社が開発しました。画面の右側に複数の慈善団体のロゴを掲出した状態で動画広告が再生されます。再生と同時に10秒間のカウントダウンが始まり、残り秒数が0になるとロックが解除されて、視聴者が寄付先を選べるようになる仕組みです。
山﨑:寄付金は広告主が負担するため、視聴者はソーシャルグッドな取り組みへ気軽に参加することができます。当社でも広告主から頂戴したフィーのうち半額を寄付に充てています。
──そもそもなぜこの取り組みを始めるに至ったのでしょうか?御社の企業理念や日ごろ感じている課題の観点からお聞かせください。
李:博報堂DYグループには「生活者発想」のDNAが流れています。企業として収益を生むことはもちろん、広告の先にいる生活者がどのような思いで情報を受け取るかを大切にしているのです。生活者により受け入れられやすい広告の形を模索していく姿勢は、当グループの理念にもマッチしていると言えます。
また広告ビジネスに関わる者として、デジタル広告に対するネガティブな印象を変えたい思いがありました。特に動画広告は「鬱陶しい」「邪魔」「スキップしたい」と思われるケースもあります。社会貢献と広告を組み合わせることにより、広告視聴をポジティブで意味のある体験にできるのではないかと考えていたところ、Good-Loopの存在を知りました。Good-Loop社のオフィスに電話でコンタクトを取り「日本を含むアジアでGood-Loopを展開させてほしい」と申し入れたのが始まりです。