オフライン広告が有するメディアミックスの可能性
話題になったオフライン広告を紹介する本連載。
最近、オフライン広告に挑戦したいと考える企業のマーケティング担当者が増えており、私にもそういった相談を多くいただきます。挑戦したい理由は企業によって様々ですが、「Webではリーチできない層を獲得したい」や「Web施策が一段落したから新たな施策に挑戦してみたい」といったものが多いようです。
個人的には、Web施策で獲得できているのであれば、それ以上に効率的な施策はないと考えています。ただし、オフライン広告には、「ブランドイメージの向上」や「爆発的な広がり」を狙えるという強みがあります。
同じ予算を使い、Web広告のみで100名を確実に獲得するところを、Webと拡散力のあるオフライン広告をメディアミックスすることで200名獲得できるということもあるでしょう。もちろん、世間情勢や季節などの時期的要因、人通りや利用者属性などの場所的要因、こうした複数の要因の掛け算で成果は変わります。そこはマーケターや広告代理店の腕の見せ所でしょうか。
本稿では、2023年度(2023年1月~6月)に私が撮影してきた広告の中から、話題化した事例、おもしろいと思った事例をピックアップ。現地で見て、体感した感想を基に特徴やアイデアのヒントを解説していきます。
原材料を真っ白で表現 あえて見えるように書かない広告
まず一つ目の事例は、2023年4月に実施されたアイスクリーム「明治 Dear Milk」の広告です。
「原材料、乳製品のみ」で作られたアイスクリームを表現するために渋谷駅などで展開された広告は、ぱっと見だと文字情報は一切ありません。右下に商品らしき写真が印刷されたのみで、真っ白なデザインになっています。
近づいて見てみると、「原材料、乳製品のみ」などのメッセージが記載されているとわかります。目を凝らしてよく見ないと気づかない程度の濃さで印刷されていました。
OOHにおいて、テキストで商品特徴を伝えることは簡単です。しかし、ただ文字を記載したところで、読んでもらえるかは別問題で、通行人の関心をいかに一瞬で引きつけるかが明暗を分けるポイントになります。
真っ白なことで、「なんじゃこりゃ?」という疑問から興味を持たせる演出や、視覚的に「原材料、乳製品のみ」のアイスクリームであることを、“見えるように書かないこと”で訴えかけた事例でした。
他にも思い切りの良い表現をした広告の事例としては、オリジナルWebtoonの制作・配信事業を展開するソラジマが2023年5月に掲出した「漫画編集者求む。」の広告も挙げられます。
同広告は、渋谷を代表する広告枠「ハチコ―ボード」に展開された求人広告。同枠は、縦4m×横20mという巨大なサイズに加え、常に人が多いJR渋谷駅ハチ公改札付近での展開ができることで、年間を通して人気があります。
青地の背景に「漫画編集者求む。」とゴシック体で力強く書かれたテキストが印象的で話題になりました。同社Co-CEO前田氏はXで「リッチなデザインにしても天下の大企業たちにはクオリティ勝負では勝てないだろうなと思い、印象に残るようにプライド捨ててあえてシンプルかつストレートなデザインで出してみました!」と発信。
費用をかけて広告を出している手前、多くの情報を盛り込むべきといった判断になりがちです。そんな中で、要素を最大限に省き、ワンフレーズだけで勝負する思い切りの良さで存在感を出していました。