つい応援したくなる「ニッチを攻める」広告戦略
2022年12月からスタートした「僕とロボコ」のアニメ化記念広告もユニークな事例として挙げることが出来ます。
同企画では、渋谷の消火栓や家電量販店の店頭モニター、新聞の小枠など、小さくニッチな広告枠に対して多数出稿されていました。SNS上では、消火栓広告の発見報告が散見され、ロボコファンを中心に広く話題化しました。

漫画が原作でアニメとなった事例だと、直近では「SPY×FAMILY」や「チェンソーマン」、「推しの子」の広告が渋谷・新宿などの主要駅で大型OOHに出ている事例を知っている方も多いと思います。「アニメ化する人気作」であれば、派手なOOHが展開されることも少なくありません。しかし、同作の広告に関しては「夢はでっかく山手線ジャック!!」など、小さい枠での出稿に対して同情を誘いつつ、つい応援したくなるような演出を行っていました。
最終的には、クラウドファンディングで山手線への広告掲載を目指したプロジェクトが始動し、目標額を達成したことで山手線への掲出が実現しました。

話題を生んだ「視線をコントロール」する広告
音楽事務所のWACKが2023年6月に掲出したOOHはシンプルながら、関心を集めた広告となっていました。同社では、毎年6月の渋谷ジャック広告が恒例となっています。
2023年の広告では時期をずらして二段階で展開。まずは6月12日に渋谷のハチコ―ボードで「BiSHのいないWACKなんて、とお思いの皆さん。(左につづく。)」と手書き風メッセージが書かれた広告が出現しました。12日時点では「つづく」部分は掲出されておらず、ネット上では何が起こるのか、といったユーザーの発信が散見されました。

そして数日後、実際に12日の広告の左にある別の広告枠には「つづく」部分が出現。「WACKはしぶといぞ。」というゴシック体の力強いメッセージに「渋谷だけに。」と抜け感のあるギャグが添えられていました。
仕掛けは非常にシンプルですが、「左につづく」と書かれると、やはり左側が気になりますし、何が起きるのか期待するワクワク感も生まれます。実際、私も続きの内容を毎日確認しに行っていました。
視線を誘導する手法でいえば、新卒のダイレクトリクルーティングサービスを展開するOfferBoxが6月に掲出した広告も注目を集めました。
同広告は、就活生の気持ちが前向きになるように、「視線が上がる広告」としてメッセージが枠内の上部に集中したデザインになっています。渋谷駅中心に展開されました。

なお同広告は、大学教授の監修のもと「視線を上げることで気持ちが前向きになる」という行動心理学に基づいているとのこと。身長180cmほどの私で、視線を少し上げる必要がある位置に文字があったことで、自然と視線が上に向く不思議な広告でした。

6/1は就職活動の選考解禁日でもあり、学生に向けた応援メッセージであったこともうかがえる