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シンフォニーマーケティング庭山氏が解説 日本企業のBtoBマーケティング、進化に向けたはじめの一歩

まずは、マーケティングの「型」を知ろう

 もう一つ、日本が周回遅れになった理由を、アンゾフの成長マトリックスで解説します(図表2)

図表2 アンゾフの成長マトリックス(出典:シンフォニーマーケティング)
図表2 アンゾフの成長マトリックス(出典:シンフォニーマーケティング)

 日本企業の売上は主に市場・企業が既存、製品サービスが既存である第1象限にあります。日本企業の多くは上位15〜20%の得意先である既存顧客の売上と、上位15〜20%の既存商品・サービスで売上で、全体の70〜80%を稼いでいます。このエリアにマーケティングは必要ありません。大事なことは納期、スペック、欠品・不良品を出さないといった納品の部分です。これさえ守っていれば、前年対比で100数%の受注ができた時代が戦後50年近く続いてきたのです。

 しかし、既に第1象限の成長は止まっています。したがって、残りのエリアを攻めていくことが日本企業の課題になります。経営学者のピーター・ドラッカー氏は『企業には2つの基本的な機能が存在する。すなわちマーケティングとイノベーションである』と述べていますが、日本企業のイノベーションは今でも世界有数であるものの、マーケティングが弱いのです。

 マーケティングを強化していくには、それぞれの型を理解する必要があります。たとえば、新規の製品・サービスで、既存の市場・企業を攻める第2象限エリアで必要なのは、ABM(Account Based Marketing)という型です。この型を持っていなければ、既存顧客でもクロスセル・アップセルはできません。

 左下の既存の製品サービスで新しい市場を開拓しようとする第3象限エリアでは、GTM(Go To Market)という型が必要です。この施策には、既存顧客よりも手間が20倍かかると言われています。そのため、販売代理店の活用も必要になりますが、日本企業には販売代理店を管理するためのPRM(Partner Relationship Management)のノウハウがありません。加えて、ここではMDF(Market Development Funds)という資金運用も重要となるのです。

古典的な理論にも大いなる学びがある

 このように、AIの登場でマーテックが急速に進化する中で、ここ最近、世界的に原点回帰に向かうトレンドが見られます。古典的な理論に学びを得ようとする流れが強くなっていると感じています。

 たとえば、ドラッカー氏は「企業が売っていると信じているものを顧客が買っていることはまれである」という言葉を残しています。企業は技術を買ってくれていると思っていても、顧客が重要視しているのは、技術ではなく、実はラインを止めない安定供給能力と考えているケースもある。そうしたDoVを導き出すためには俯瞰的な目が大切です。

 同様にセオドア・レビット氏が残した「ドリルを買いに来た人が欲しいのはドリルではなく穴である」という格言もよく引用されます。これは、ソリューション型の価値を提供しようとする重要な考えで、PMF(Product Market Fit)の考え方にも通じています。

 その他にも、世界的ベストセラー「The One to One Future」の著者でLTVという概念を世界中に広めたドン・ペパーズ氏が、その著書の中で「シェアの概念をライフタイムバリューへと転換できない企業は生き残ることはできないだろう」と述べていることも再び注目されています。

 マーケティングで企業が使える資産に関しても、多くの格言が残っています。たとえば、レビット氏は今から約50年も前に「企業の最も重要な資産は顧客情報である」と述べています。また、ブランド論の第一人者であるデイヴィッド・アーカー氏は「ブランドは企業の重要な資産である」という言葉を残しました。

 その他によく引用される言葉や理論を列挙すると、イゴール・アンゾフ氏の、戦略(Strategy)を立て、組織(Structure)を作ることで、適切なシステム(System)を選ぶことができるという3S理論。「現代広告の父」と呼ばれるデイヴィッド・オグルヴィ氏の「数を追うのは間違っている。大事なことは、重要な人にリーチする事である」という格言。マーケティングミックスの4P(Product、Place、Price、Promotion)を世界に広めて紹介したフィリップ・コトラー氏の「プロモーションだけをマーケティングと勘違いしているマーケターが多過ぎる」という言葉なども現代に通じます。

 また、Right Person、Right Timing、Right Informationを極めるマーケティングにおける3R理論なども40数年前から変わっていません。ちなみに、シンフォニーマーケティングという社名は、ドラッカー氏の「従来の組織は軍隊をモデルにしている。ところが情報型組織はオーケストラに似ている」という言葉に由来しています。

 そもそも、こうした古典的なBtoBマーケティング理論を学べる場が少ないという問題が日本には根強くあります。シンフォニーマーケティングでは、BtoB企業がマーケティングで賢く成長するためのプラットフォーム「IGC(Intelligent Growth Club)」サービスも提供しています。みなさん一緒に、日本のBtoBマーケティングをもっと進化させていきましょう。

❖ 庭山一郎氏の近著 ❖

『儲けの科学 The B2B Marketing(ザ・B2B マー ケティング)』 日経BP(2024/3/15) 2,750円(税込)
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塚本 建未(ツカモト タケミ)

ライター・編集者・イラストレーター。早稲田大学第二文学部を卒業後、社会人を経て再び早稲田大学スポーツ科学部へ進学。2度目の学部卒業後は2つの学部と高校デザイン科で学んだ分野を活かすためフィットネス指導者向け専門誌「月刊Fitness Journal」編集部に所属してキャリアを積み、2011年9月から同雑誌の後継誌「月刊JAPAN FITNESS」編集部の中心的な人物として特集・連載など数多くの誌面を担当した。現在はWebメディアに主な...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/22 09:30 https://markezine.jp/article/detail/43226

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