俳優と経営者、2つの経験でキャリア観はどう変化した?
廣澤:AGRIKOを立ち上げて以降、俳優と経営者という2つの顔を持つようになるわけですが、仕事の捉え方やキャリア観はどのように変化しましたか?

小林:映像作品における俳優業ではOKテイクを出さないといけなくて、完璧な状態で作品を世に出すので基本的には制作の過程がほとんど見せられません。メイキングなどでNG集が出たりしますが、それも番宣のために出すものなので、基本的に失敗が許されない職業だと思っています。
でも、起業して以降かっこいい姿を1ミリも出せなくて、最初はいろんな人に話を聞きに行ったり、謝ったりしたりしながら、できないことだらけで恥ずかしい思いをたくさんしました。でも、たくさんの人に支えられて事業を進める中で、できないことは恥ずかしいことではないと思えるようになって、それは俳優業でもプラスになっています。
また、俳優業も会社の経営もチーム戦というのが共通していると思っています。音声やカメラ、メイク、衣装、技術など様々な仕事のプロフェッショナルの方が自分にはできないことをしてくださっていると感じながらいつも仕事をしていたので、それは会社の経営に通じると思っています。
自分にはできないことをたくさんの人が補ってくれるし、自分がすべてできる必要もない。チーム戦だと思って臨んでいるのは俳優と経営者の共通点だと思っています。
廣澤:失敗は恥ずかしい、ダメな自分を見せたくないと感じ、その結果、無理をして組織としての力を有効活用できないといった事象は会社員にも起こり得ることですね。
小林:もちろん失敗しないように一生懸命取り組むんですが、それでもできないことや知らないことは必ず出てきます。でも、検索したり、人に聞いたりすれば解決できますし、きちんと感謝や謝罪をすれば決して恥ずかしいことではないと思います。知らないことがあるのはしょうがない、そのときに学ぶ姿勢を持つことは、現代において必要なマインドだと思います。
廣澤:小林さんのお話を聞いて、知らないことは恥ではないが、知ろうとしない態度や知らないことを放置したままにする態度が恥ずかしいことなのではないかと感じます。
俳優業と農業がもたらした相乗効果
廣澤:俳優業と企業経営の共通点の話が出ましたが、2つのことに取り組んだことで生まれた相乗効果はありましたか。
小林:わかりやすいのはドラマを見てくださった方がAGRIKOのことを知ってくれたり、応援してくれたりするのは両方やってることのメリットですね。また、農業をしているだけでは社会課題の認知してもらうのは難しいですが、俳優業をしているからこそ今日のような取材などを通じて伝えることができるのは相乗効果につながっていると思います。
農業に関する素晴らしい取り組みをしている方はたくさんいるんですが、それが上手く伝わっていないのが現状なので。
廣澤:小林さん自らが媒介となり農業の課題や新しい取り組みを伝えていけるし、その結果仲間も増えていくんですね。
では、前編の最後に今後AGRIKOで成し遂げたい目標はありますか?
小林:AGRIKOでは「障害を持った方や高齢者になっても無理なく続けられるようなバリアフリーな農業の実現」をミッションに掲げているのですが、これが今のやりたいことであり会社の存在価値でもあるので、今後も力を入れていきたいです。
後編では、AGRIKOが行っているビジネスの詳細やミッション・ビジョン・バリューの策定方法、社会課題とビジネスのつなげ方について話をうかがいます。お楽しみに!