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【特集】事業フェーズ×組織規模で見る「BtoBマーケティング」

つまずきポイントを知って成果につなげる ABMのベストプラクティス

ABM≠アウトバウンドマーケティング

──田口さんは二年前のイベント「MarkeZine Day 2021 Spring」でABMのベストプラクティスを紹介されていました。改めて内容を説明していただけますか?

 当社が多くの企業にインタビューを行い、ABM導入の成功企業に共通する特徴を抽象化した「ABMサークル」があるため、その図(図表1)を基に説明します。

図表1 FORCASが開発したABM サークル
図表1 FORCASが開発したABMサークル

 ABMサークルは、ターゲットを可視化するプロセスと、施策実行&効果測定のプロセスを表す二つのサークルで構成されています。二つのサークルを行き来し続けることが当社の考えるABMのベストプラクティスです。

 左側のサークルでは、既存顧客を分析することによって今後自社が対象とすべき顧客像を可視化します。たとえば企業規模や業界のほか、DXや働き方改革の推進状況など、様々な特徴が出てくるはずです。その特徴を備えた企業で、まだ取引がないもしくは取引額の小さいところが潜在顧客となります。潜在顧客をまとめたターゲットリストをマーケティング部門で作成し、完成したリストを基に営業部門と議論する流れです。

 ポイントは、ターゲットリストに具体的な企業名を明記することです。そうすることにより、営業担当者はアプローチすべきか否かを判断しやすくなります。日々顧客と接している営業担当者が判断を大きく外すことはないものの、彼らが見逃してしまうポイントをリアルタイムのデータで以てマーケティング部門がカバーするイメージです。

 左側のサークルが完了したら、次は右側の施策実行&効果測定を行います。先にターゲット企業を特定したことで、届けたい商材と価値が明確になり、確度の高い施策を考えられるようになるでしょう。効果測定をして結果が芳しくない場合は、改善を重ねながら同じステップを繰り返します。

 ここで改めてお伝えしたいことがあります。それは「ABM≠アウトバウンドマーケティング」ということです。「アウトバウンドコール部門を設立するからABMにトライする」とおっしゃる方に時々出会いますが、このサークルをご覧になればわかる通り、ABMはアウトバウンドマーケティングの上位概念です。「定めた対象にアプローチするための施策としてアウトバウンドコールを行う」なら理解できますが、両者が等しい概念ではないことを今一度強調しておきます。

──イベントでの発表から二年以上が経過しましたが、ベストプラクティスに変化や更新はありますか。

 ベストプラクティス自体に変化はありませんが、推進を阻む課題が新たに生じています。第一の課題は「合意形成の難化」です。テクノロジーの浸透により顧客のビジネスモデルが変化した上、コロナ禍の影響を受けて顧客接点の多様化が進みました。営業部門が描く顧客像とマーケティング部門がデータを基に描く顧客像には元々ズレが生じやすいものですが、営業活動の高度化によって両者の合意形成はますます難しくなりつつあると感じます。

 ターゲット企業の合意形成がままならないために「最適な施策が決まらない」という第二の課題が生じます。要は誰に対して何を訴求すれば良いかわからないのです。わからないからうまくいっている企業のやり方をそのまま取り入れるなど、手段の目的化に陥ります。結果的にLBMの推進時と状況が変わりません。

 第三の課題は「営業とのデータ連携」にあります。顧客の情報は日々更新されます。たとえターゲット企業の合意が取れても、営業担当者が各社の業績やニュースに日々触れることは難しいものです。営業担当者が対象企業への理解を深めて確度の高い提案をするためにも、ABMサークルのステップ4にあたる施策の決定時に、マーケティングだけでなく営業のToDoも整理する必要があります。

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大手企業のABM推進はなぜ難しい?

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/09/20 09:30 https://markezine.jp/article/detail/43527

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