コロナ禍で、オンライン接点の創出が急務に
旭化成グループでは、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域で事業を展開している。その中で、ヘルスケア領域を担い、医療用医薬品を医師たちに提供しているのが旭化成ファーマだ。そんな同社で、オウンドメディア「Pharma DIGITAL」の運用責任者を務める桐山氏が、同社のマーケティング体制を説明する。
「私が所属するデジタルマーケティングプロジェクトでは、製品戦略に基づいた戦術(プロモーション)を設計するプロダクトマネージャーと連携して、記事コンテンツなどをWeb上に展開しています」(桐山氏)
旭化成グループでは、全社にDXを推進するデジタル共創本部を置く。その一部門であるCXトランスフォーメーション推進センターでは、営業・マーケティング業務のDXを推進している。センター長の石川氏は、コロナ禍でのプロモーションチャネルの転換についてこう述懐する。
「コロナ禍で、エッセンシャルワーカーである医療関係者に対するMR(※)の接触機会が大きく失われました。その接触機会を補うために、デジタルマーケティング施策をより積極的に行う必要があったのです」(石川氏)
※Medical Representatives(医療情報担当者)の略。医師や薬剤師に対し、自社の医薬品のセールスを行う営業担当者のこと
というのも、旭化成ファーマでは従来、フィールドセールスであるMRが医薬品のプロモーションを主として担ってきた。MR以外では講演会や学会セミナーなどが顧客との主な接点だった。しかし、緊急事態宣言で対面での営業活動が制限された結果、MRの医療関係者との面談数は半分近くにまで減ったという。代わりに、Web会議システムを利用したオンラインでの営業件数は大きく増加した。
リニューアル前と比べ、ユーザー数は約10倍
こうした状況下で「医療関係者の皆様に途切れず情報提供することが、延いては患者様の健康にもつながる。そう考え、Webサイト『Pharma DIGITAL』のリニューアルに着手した」と石川氏は語る。
改善コンセプトは「つながる」だ。MRがコロナ禍でも引き続き医療関係者との接点を保てるよう、機能を追加。さらに、実際に「Pharma DIGITAL」を営業活動で役立ててもらうための仕組み作りも行
なお、この“つながる”は、旭化成ファーマと医療機関のつながりだけを意味するのではなく、医療関係者同士もつながれることを目指した。
石川氏は、そんな「Pharma DIGITAL」のサービスの一部を紹介。たとえば「MRへのコンタクト機能」では、ユーザーである医療関係者がログインするだけで、まず担当MRの顔写真が表示される。下のボタンをクリックするとメーラーが立ち上がり、即座にコンタクトがとれるというもの。
その他、会員情報入力の負担軽減のため、他の医療関係者向けメディア/プラットフォームと連携し、シングルサインオンを実現した。
また、ウェビナーなどのコンテンツも拡充。整形外科手術の動画や、大学病院の医局や留学経験のある医師を取材した記事コンテンツを公開。会員となった医療関係者らは、自らが所属する施設以外での、先進的な取り組みを日々、知れるわけだ。
石川氏は「こうした機能・コンテンツ拡充を通じ、『Pharma DIGITAL』のユーザー数はリニューアル前と比べて約10倍に。数字ベースでは、約4万人の医療関係者に会員登録してもらっている」と説明。さらに、直帰率は約60%減少、セッション数も約2倍に増えるなど、改善が見られるという。