MRからも戸惑いの声が 懸念解消に奏功した「三つの鍵」
「Pharma DIGITAL」のリニューアルを機に、オンライン接点の創出に乗り出した旭化成ファーマだが、リニューアル当初はMRの現場からも戸惑いの声が挙がっていたという。
「MRにとってのメリットや会員化の目的を疑問視する声や、『サイトの更新内容をあらかじめ教えてほしい』などの声が聞かれました。そうしたMRの方々の不安を払拭するのに、我々が講じた施策、その“三つの鍵”を説明します」(桐山氏)
一つ目の鍵は「丁寧に、“泥臭く”説明すること」だった。前述の通り、旭化成ファーマではプロダクトマネージャーと相談し、製品戦略に基づいてデジタルマーケティング施策を展開する。それは、営業活動も同じ。川上の製品戦略に基づいて、それぞれのMRはフィールドセールスを行っていたのだ。そこで、「Pharma DIGITAL」のメリットを語る上では、共通する製品戦略に紐づけた説明の仕方が肝となったという。
具体的な伝達手段としては、支店長会議などの「営業ラインを通じた説明」と、デジタルマーケティングプロジェクトのメンバーがMRの質問に答える「Q&A機会の設定」、この両面でのアプローチが有効だったようだ。
「『他社のWebサイトとの違いは?』や『私たち(MR)のメリットは?』『こういう機能はないの?』といったMRからの質問や要望があれば、我々が直接説明して彼らの疑問の解消につなげていきました。その結果、現場の理解はより深まったと実感しています」(桐山氏)
MRが自身の知見を活かせる“余白”も設ける
二つ目の鍵は「セールスとデジタルマーケティングが二人三脚でナーチャリングできる仕組み作り」だ。この二人三脚実現のため、「Pharma DIGITAL」ではリニューアルに際し、MRの営業のフォローになるような機能が複数、搭載された。
たとえば「Pharma DIGITAL」では、本人からの許諾を得た上で、会員のメールアドレスをWebメーラーに連携できる。これにより、MRは担当の医療関係者のメールアドレスを知らなくてもメールが送れるようになる。また、メールはHTML形式にしたり、動画を埋め込んだりと、リッチ化もより容易に。さらに、製品部と協力して製品戦略・目的に沿った様々なメール文面テンプレートを用意した。
このメール文面テンプレートがミソだった。これにより、MRはテンプレートを利用し業務負担を軽減させつつも、担当医師の興味・関心といった、MRがこれまでの営業活動で得た知見をフル活用し、適宜文面を変えたパーソナライズドメールが送れるようになったわけだ。
三つ目の鍵が「MRがよりデータを駆使して営業活動できるよう、環境を整備すること」だった。具体的には、CRM基盤に各プロモーションチャネル(サイトやウェビナー、メルマガなど)のログデータを集約させ、一人の医療関係者がどのチャネルに触れたかを時系列で見られるようにした。
さらに、売上データとも連携させることで、各チャネルや自身の営業活動がどの程度成果につながったのかを分析・検証できるようにした。
「このようにMR自らがデータを確認し、営業活動に活かせる環境を整えたことで、デジタルマーケティングに対する理解も自然と深まっていきました。また、『PharmaDIGITAL』への来訪やWebメーラーの送付状況はBIでも表示しており、デジタルマーケティングプロジェクトのBI&CRMグループが、BIを含めたデータの活用を解説する説明会を開催したことも大きかったと思います」(桐山氏)