他のSNSへの移行は起こっているのか?
Xで離脱は発生していなくても、他のSNSへの移行が行われた可能性はあります。候補は様々なものがありますが、ここではThreads、Mastodonのアプリ使用率の上昇を調査することにより、他のアプリの移行が行われたかを検証していきます(図5)。使用率の定義は、「ネットを使用している人のうち、そのアプリを使っている人の割合」です。
MastodonとThreadsは、Xと比較すると変化が捉えにくいため、縦軸の上限を変更したグラフも掲載します(図6、図7)。
Mastodonでの変化
図6のグラフより、Mastodonの移行者が発生したのかを検証します。6/19週は0.05%だった使用率が、6/26週は0.15%、7/3週は0.19%と使用率が上昇しています。ネット人口の約0.1%がMastodonへの移行を考えたと解釈できます。
Mastodonの視点からは、ユーザー数で考えるとこの期間に約3倍になったことになりXの影響を確認することができました。
しかし、Xの視点で考えると、Xの使用率はネット人口の約50%あり、Mastodonへの移行者の0.1%は非常に少ない数字です。Mastodonの増加量のすべてを移行者とみなしても「Xからの移行者はほとんどいない」と解釈できます。
ただ、Mastodonはブラウザや豊富なサードパーティ製アプリが存在するため、そちらで使用しているユーザーが多い可能性があることは注記しておきます(とは言え、サードパーティ製のアプリも規模感のあるものは「A-cube」のデータ内からは見つかりませんでした)。
Threadsでの変化
次にThreadsへの移行者についても検証します。
Threadsは7月6日(7/3週)にリリースされ、その週に5.2%の使用率になるユーザー数を獲得しました。まずは、この移行者がXに与えた影響を検証します。Xの使用率は、6/26週は50.1%、7/3週は50.0%と推移しています。つまり、XはThreadsのリリースの影響を受けて離脱が発生したとは言えません。移行対象として検証はしてみたものの、実際の移行は発生していないことが推測されます。
Threads・Mastodonを使い始めた人はまだ使っている?
ここまでで、Xの離脱に影響はないものの、ThreadsやMastodonでユーザー数の増加の発生は捉えることができました。次に、これらのアプリを使い始めたユーザーが、まだアプリを使用し続けているのかを検証します。
なお、本記事の執筆を行っている時点で最新の8/14週までのデータで確認します。
Mastodonでは、以下のような使用率の推移となっています。
Mastodonのユーザー数の増加が発生した7/3週には使用率が0.19%になりましたが、8/14週には0.07%まで戻りました。0.07%はほぼ増加前の同水準で、増加したユーザーはほぼ離脱したか、その影響で既存ユーザーが減ったと考えられます。
Threadsは、以下のような使用率の推移となっています。
Threadsはリリースした7/3週の使用率が5.2%で、8/14週は4.5%でした。ピークはリリースした翌週の7/10週で、7/17週には減少が始まり4.6%、そこからほぼ一定の水準で推移します。単純に見ると、検証をした8割のユーザーが残っていると解釈できます。減少はしたものの、多くのユーザーが使用を続けていることがわかります。筆者は、お試しで使用してみたものの離脱するユーザーが多いと予想していたため、8割の定着率には驚きました。
XとThreadsは併用されているのか?
Threadsのユーザーは、Xのユーザーが移行先に選んだという仮説を基にこれまで検証してきました。しかし、そもそもユーザーが重複していなければ相互に影響は与えないことになります。
「A-cube」は、アプリの併用ユーザーを抽出することもできます。この機能を使い、Threadsを使い始めたユーザーが、Xのユーザーでもあるかを検証します。
まず、7/3週にThreadsとXの併用規模を見てみます(図10)。
7/3週では、ThreadsとXを併用している割合は4.6%でした。Threads全体の使用率は5.2%なので、Threadsユーザーのうち88.1%のユーザーがXと併用していることが確認できました。
次に、Threadsに定着したユーザーが、Xと併用しているかを確認していきます。こちらは8/14週の併用規模を確認します。
8/14週では併用使用率は3.8%で、Threads全体では4.5%でした。Threadsを使っているユーザーのうち、84.9%はXも使用していることになります。7/3週に比べて3.2%の低下がありますが、引き続き多くのユーザーがXと併用しています。
