ECサイトの信頼性を大きく左右する「レビュー機能」の有無
山崎氏はECサイト上で活用できるUGCとして「レビュー」と「ハッシュタグ」の2つを示す。
顧客体験を考えれば“クチコミ”は欠かせない。誹謗中傷は規制などの対応が必要だが、きちんとしたレビューは購買を検討するユーザーにとって非常にありがたいものだ。
企業が一方的に発信する情報には商品の良いところだけが掲載されることがあるが、レビューには「こういう面は」「私にとっては」という第三者の視点が含まれ、レビューは企業からの説明より12倍信頼されているというデータもあるという。
「自分を一人のユーザーだと思って考えると、レビューの重要性について気付くことができると思います。たとえば、Amazonや楽天で商品を検討している時、口コミが0件だと私も購入をためらいます」(山崎氏)
さらにいえば、レビュー機能がついていないECサイトは敬遠される可能性がある。レビューやクチコミの有無だけでなく、ECサイトとしてのレビュー機能を設けているかどうかがユーザーにとってのモチベーションになるということだ。「レビュー機能自体の有無がサイトに対する信頼性に大きな影響を与える」と山崎氏は強調した。
加えて、Q&Aも信頼性向上のために重要な機能で、Amazonなどが既に実装している。ここで指すQ&Aは公式が前もって掲載しておくQ&Aではなく、購入を検討しているユーザーが製品に関する細かい質問をすると、ユーザーやメーカーの担当者が回答してくれる場のことである。このディスカッションの場は、双方向性のあるインタラクティブなコンテンツになっている点がユーザーに好まれるポイントだ。
ECサイトとSNSとの架け橋になる「ハッシュタグ」
EC上でのUGC活用に向けてもう一つ加えたい機能がSNSから生まれた「ハッシュタグ」だ。SNSと同様、ハッシュの後にキーワードをつけて特定のトピックに関する情報を集約しやすく、ユーザーは膨大なUGCを横断でき閲覧しやすい状態になる。
「ECサイトにおけるレビューもUGCの一つで、近年は読み切れないほどたくさんのレビューが集まるようになっています。それをハッシュタグにすることで、商品説明がわかりやすくなることはもちろん、サイト内回遊の向上や滞在時間の向上にもつながります」(山崎氏)
たとえばアパレルのECサイトなら「トップス」「ボトムス」「メンズ」「ウィメンズ」といったジャンル分けがある。ユーザーが作るハッシュタグもそれと近い形で機能し、商品を絞り込める。重要なポイントとして「ハッシュタグはユーザーが作成してSNSのように盛り上がれるところが良い」と山崎氏。
実際にハッシュタグ機能を導入した企業は、回遊率や流入の増加といった効果が出ているという。流入にも効果が出た背景を、山崎氏は「ユーザーが作ったハッシュタグ・レビューは企業が一方的に押し付けているコンテンツではないため、Googleからも重要性が高いページだと評価され、SEOにも効果があるのではないか」と話す。また、SNSとECサイトがハッシュタグを通して結び付くことで、外部との接続という意味でも新たな価値が生まれていくという。
こうしたUGCが、特にECリテールでは「CX向上のスパイラルを生み出す」と山崎氏は語る。よくいわれていることだが、従来の購買行動は「認知・共感・購買・体験」まで完結していた。ところがSNS普及以降は加えて、購買体験後の「発信・拡散」がある。もちろん100人が購買して100人に気に入られるプロダクトはなかなかないため、発信されるレビューの中には好意的な意見もそうでないものもある。
「実際に使ったユーザーが良いも悪いも発信して、それが次に買うユーザーの検討材料になる。ユーザーはUGCがあることで『思い切って買おう』という決定ができる。そういった購買体験のサイクルが生まれるわけです」(山崎氏)