すべての源泉は「感動」である
顧客は集めるものではなく創るものである。KANDO(感動)こそが顧客を創造する源泉価値であり、人は強く心を動かされた時に行動(購買)をする――こう言い切るのは、丸亀製麺のマーケティングを統括する南雲克明氏だ。
丸亀製麺は、「食の感動で、この星を満たせ。」のスローガンのもと、全社で“感動の創造”を徹底。丸亀製麺に限らず、トリドールが手掛けるすべての店舗は、“本物感”と一貫したストーリーを軸に、店舗内の動線から厨房の設計・配置、照明、席数、内装に至る細部までこだわり抜かれている。2022年にインターブランドジャパンの「顧客体験価値(CX)ランキング」で1位を獲得しているが、これもうなずける結果だ。
そんな丸亀製麺が展開する「KANDOドリブンマーケティング」には、次の3つのキーワードがあるという。
1.KANDO(感動):顧客体験価値の源泉であり、最重要項目。
2.非合理の強さの追求=二律両立:事前合理性のない非合理の強さ(=感動)を信じ追求することが重要。非合理なほど参入障壁が高くなり、結果、独自の市場価値創造と構造的優位の構築につながる。
3.感性とデータの両立:データから感動は生まれず、感性だけでは再現性がない。両方を組みせたマーケティング戦略・戦術が必要。
感性×データサイエンスの二律両立
スローガンの「食の感動で、この星を満たせ」は、ミッション、ビジョン、ストラテジー、マーケティング、哲学のすべてに結びつくよう設計されている。
意思決定には感動が優先されるが、先に挙げた3つのキーワードにある通り、再現性をもって合理的にKANDOドリブンマーケティングを実行していくためには、一見相反することを二律両立させていかなければならない。具体的には、短期の成長×中長期の成長、感性×データサイエンスの2軸の掛け合わせが、KANDOドリブンマーケティングの根底にあるという。
また、持続的に選ばれる確率を高めるためには左脳と右脳へのアプローチも両立させる必要があると南雲氏は話す。左脳へのアプローチが選ばれる理由を理性的に創り、右脳へのアプローチが選ばれる衝動を直感的に創るというわけだ。
KANDOドリブンマーケティングは、ブランドやマーケターの想いだけで成り立っているのではない。「KANDO」「感性」の裏には、データに基づいたロジカルなマーケティングがある。