商品プロモーションの基盤 プロダクトマーケティングにおける4つの基本的な考え方
今回紹介する書籍は『LOVED 市場を形づくり製品を定着に導くプロダクトマーケティング』。著者は、これまでMicrosoftとNetscapeでプロダクトマーケティング担当として働いてきたマルティナ・ラウチェンコ氏。現在は、SVPG社のプロダクトマーケティングパートナーとカリフォルニア大学バークレー校の工学部大学院講師を務めています。
本書では、何百もの企業やプロダクトマーケターにアドバイスやコーチングを行ってきた著者が、「プロダクトチームとプロダクトマーケティングの連携が上手くいく」ためのベストプラクティスやテクニックを紹介しています。
多くの市場において、類似の機能を持つ他社製品と比較されてしまう現在、各プロダクトの差別化は非常に難しく、市場において自社商品のポジションを明確にできていない企業は競争から脱落する危機にさらされています。
では、著者が企業に薦め、解説する“プロダクトマーケティング”の定義とはなんなのでしょうか?
プロダクトマーケティングは「顧客と市場のインサイト」を基に
ラウチェンコ氏は、プロダクトマーケティングを行う上で重要になる活動として、「アンバサダー(顧客と市場インサイトをつなぐ)」「ストラテジスト(プロダクトのGo-to-Marketを方向付ける)」「ストーリーテラー(世の中がプロダクトをどう捉えるかを形作る)」「エバンジェリスト(他者がプロダクトのストーリーを語れるようにする)」の4つを紹介しています。
活動の一つ目に挙げている「アンバサダー」をすべての基本として説明する中で、プロダクトマーケティングの役割を次のように説明しています。
プロダクトマーケティングは、その専門性を発揮して、プロダクトを市場に届けるような道筋を作り上げる。その専門性は、プロダクトがどのような問題を解決し、どのような顧客がターゲットになりうるかを理解しているだけに留まらない。あらゆる状況において、市場や顧客のインサイトを提供するのだ。その仕事の範囲には、顧客のセグメンテーション、顧客が新しいものを求める原動力となっている不満や問題の把握、顧客となるまでに歩むジャーニーのステップの明確化などが含まれる。(p35)
このようにラウチェンコ氏は、プロダクトマーケティングの起点に市場や顧客のインサイトの提供があることを強調。担当者はインサイトを見つけるために想定顧客が持つ不満や問題の把握も求められ、それに基づいた道筋を明確な段階にしていく必要があると説明しています。
人の心を動かすストーリーを示して、ポジショニングを確立
本書では、先述の四つのプロダクトマーケティングの基本を複数の具体的な事例とともに解説しています。
事例の一つとして紹介されている、ラウチェンコ氏がMicrosoftのチームで行った「Word」のスペルチェック機能の実装は、他者がプロダクトのストーリーを語れるようにするという役割についてわかりやすく理解できる事例です。
プロダクト機能の背景にある、「なぜ」を、実際のユーザー行動と繋げて組み立てるアプローチと、それを従来とは異なる方法でプレゼンテーションしたことが功を奏した。(p.34)
ラウチェンコ氏のプロダクトマーケティングチームはメディアやアナリストに新たな機能を加える理由を伝える際に、作りこんだスライドをあえて使わず、ホワイトボードを使って一般的なオフィスワーカーがどのようにWordを活用しているか、そこで機能を使えばどうなるかといったストーリーを伝えたそうです。ラフなプレゼンテーションによって対話する姿勢を見せたことで、機能の価値がより効果的に伝えられたと語っています。
このように本書では、企業が市場でプロダクトの明確なポジションを確立していくために必要な考え方にとどまらず、行うべきアクションまでわかりやすく紹介しています。顧客の自社商品への理解に想定とのズレを感じる方や、競合商品と明確に差別化できていないと感じている方は、ぜひお手に取ってみてください。
本記事は日本能率協会マネジメントセンターからの献本に基づいて記事作成しております