動画運用の体制づくりや目的・導線設計のポイントとは?
セッションの中盤では、動画運用の際に考慮すべき具体的なポイントを解説した。
1つ目は体制と組織作りだ。柏原氏は「誰が動画を企画するのか、どの部署が運用・管理していくのかを、最初に決めることが重要」だと話した。加えて管理の観点から、日付や運用部門名を入れるなどコンテンツの命名規則も意識すると良いという。
2つ目は、動画運用の目的と動線の設計だ。何のために動画を運用するのか、視聴者にどのような行動変容を促したいのかを定義することが重要になる。そのうえで動画企画が成功したと見なせる条件を確定し、KGIやKPIに落とし込むのだ。
行動を促す仕掛けである視聴者動線の設計については、成功条件の達成を目指すと「動画構成はおおよそ決まってくる」と柏原氏。動画内に表示されたリンクからCVさせたい場合は、その商品が大きく映されているシーンにクリッカブルなボタンの形でECサイトのリンクを設置すると良い。また動画内にリードフォームを設置するのも1つの手になる。
動画から得られたデータの活用事例を紹介
3つ目として、視聴データの収集と利活用を柏原氏は挙げた。動画では、視聴データの収集とそれをマーケティング活動へどう利活用するかがカギとなる。
「動画から取得できるデータでは、再生回数や離脱発生ポイント、企業が伝えたいことが伝わっているのかなどを把握することができます。また、サードパーティ製のMAツールやリード情報がまとまったリストなどがあれば、連携することで誰がどのコンテンツを何分何秒見ているのか、といった個人単位での視聴データも取得できます」(柏原氏)
特にオウンドメディアのメリットは、データの所有権が運用企業側にあることだ。取得したデータは、リードのランク付けやコンテンツの性能把握に利用できる。ここで柏原氏は、実際の活用事例を紹介した。
1つ目の事例はある製薬企業だ。情報提供先である医師や看護師などの医療従事者がアクセスする会員制サイトを運営し、その中で動画を公開している。リードの視聴データを収集することで、顧客が何に興味を持っているのかを、情報提供前に把握できる仕組みだ。「そのおかげで、成約に至る確率が高いリードに対して適切な営業を行えるのです」と柏原氏は語った。
2つ目の事例は、サブスクリプション型でビジネスツールを提供する日系SaaS企業。既に契約がある顧客との距離感を図り、その製品の利用を促すために動画を利用している。同社が公開しているコンテンツは自社主催ウェビナーのアーカイブ映像で、その視聴データを収集している。
「2つ目の事例の企業の場合は、たとえばサービス利用率は低いのに動画の視聴率が高いユーザーに対して、使い方がわからないのかテクニカルな問題が発生しているのかなど、製品を利用する中での課題があるかもしれないと推測するのです。視聴コンテンツや視聴時間などのデータに基づいて、適切な顧客フォローを実施しています」(柏原氏)