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マーケティングの近未来

「検索」の終焉と「生成」の曙光。いま、マーケティングの生産性が飛翔するとき

異次元のマーケティングジャーニーの始まり

 すでに25年以上、ネット広告・デジタルマーケティングの仕事をしている。名前をいえば誰もが知っている大手IT企業・プラットフォーマー企業での勤務経験が複数社ある。1998年にGoogleが初めて世に出たときも、シリコンバレーで働いていた。口コミでGoogleのことを知り、そして、使い始めた。あのときの衝撃は忘れられない。

 Google以前の検索エンジンは、レレバンシーというコンセプトを持ち合わせておらず、使いやすいものではなかった。「Google革命」という言葉は大袈裟ではない。本当に世界が変わった瞬間だった。Appleのマッキントッシュが世に出たとき。そして、MicrosoftのWindows95が世に出たとき。とくに、DOS/VマシンからWindows95に乗り換えたとき、革命的だと思った。もちろん、iPhoneの登場も世界を変えた。

 そして、今年、ChatGPT、MicrosoftのNew Bing、さらに、Copilotもでる。PowerPointやExcelで生成AIが動作する。さらなる生産性革命が起こることは、あきらかだ。

 この業界にいると、繰り返しやってくる、この革命的なモメンタムとワクワク感がタマラナイ。麻薬みたいなものだ。脳内がバーストして、時間を忘れてマッキントッシュを使い倒し、並行してWindows95に興奮する。秋葉原に通い詰めて、自作パソコンを作って酔いしれる。ためしに、自分でウェブサイトを作ってみる。iPhoneで簡単なアプリを動かしてみる。そんな素人感覚で遊び倒すのが楽しくて仕方ない。

 ネット広告やデジタルマーケティングの領域にも今後、大きなインパクトがあるはずだ。簡単にいえば、AIDMAとかAISASとか呼んでいたマーケティングモデルが変わることになる。「Chat」はじまりの購買プロセスが追加されたのだ。あきらかに、時代の大きな変化だ。アテンションを獲得しよう、興味関心を引き起こしたい、メモリー(記憶)させたい、検索させたい。それらをすべてすっ飛ばしたプロセスだ。

 考えてみれば、それらはすべて「手段」だったはずだ。だからこそ、購買プロセス、購買に至る過程なのだ。「目的」は別のところにある。その「目的」を達成するために、New Bingなど生成AIを活用できるとき、マーケティングジャーニーがまったく異なる次元に入っていく

 「Conversational Ad experiences: Compare & Decide Ads」という広告フォーマットを2024年の早い時期に、Microsoftは導入してくるらしい。実際に使ってみないとなんともいえないが、ただ、発表内容からあきらかなのは、マーケティングジャーニーを短くしようという意図である。

 つまり、アテンションもインタレストもサーチも省略して、New Bingという「Chat」の中で、複数の商品を表示して、会話の流れで比較検討(Compare)してもらって、決定に至る(Decide)、そしてアクションまで到達する。New Bingの中ですべてやってしまうのだ。他のサイトに遷移する必要はない。マーケティングジャーニーが、購買プロセスが、New Bingの中でほぼ完了することを狙っている。

 そういえば、検索連動型広告が出てきたころ、2003年ごろだが、レレバンシーの高い検索結果に広告を表示することで、購買プロセスがより「Compressed」(圧縮される)と話していたんだ。GoogleやOverture、Yahoo!の米国本社に訪問したとき、つまり、シリコンバレーのエンジニアと話したとき、彼らがその意図を語っていた。

 購買プロセスが「Compressed」(圧縮される)ことによって、マス広告に依存しなくても検索エンジンマーケティングの力で、より早く・より速く、そして、コンパクトにコンバージョンに至るはず。だから、きっと、近い将来、テレビCMや新聞広告などのアテンションやインタレストを担うプロセスが必要なくなっていく。その結果、マス広告の売上が落ちる。一方で、ネット広告、とくに、検索連動型広告の売上が伸びるはずだ。そんな未来を、シリコンバレーのエンジニアたちが夢見ていた。

 あれから、ちょうど20年、今度は、「検索」というプロセスが「Compressed」(圧縮される)側に回ったんだな。当然、使い方次第だと思うが、いま、マーケティングの生産性が飛翔するとき。「検索」の終焉、「生成」の曙光のときなのだ。

 ネット広告が出てきて、テレビを抜くのに日本では20年ちょっとかかった。もちろん、テレビCMや新聞広告がなくなった訳ではない。同じように、検索エンジンはなくならないし、検索連動型広告もなくならない。でも、仮に「AI広告」とか呼ばれるのかもしれないけど、「検索」の終焉と「生成」の曙光のメディア環境の変化によって、検索連動型広告が「Compressed」(圧縮される)時代に入ったとしか思えない。これから20年の、「AI広告」の大きなトレンドが動き始めた。とりあえず、そういう結論にしてみたい。

 そして、ありがとう、Google。あなたは、本当に便利だったよ。いまでも感謝しているし、これからもそれは変わらない。

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この記事の著者

ヴァイオレット・エヴァーインディゴ(ヴァイオレット・エヴァーインディゴ)

1990年代に米国西海岸に留学し、シリコンバレーで就職。1998年のGoogle誕生に衝撃を受け、ネット広告・デジタルマーケティング領域に職域を転換。2000年代初めに帰国。米国大手IT企業・プラットフォーマーを6社経験。デジタルマーケティングのコンサルティングを生業とする。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/10/18 09:00 https://markezine.jp/article/detail/43762

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