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【特集】事業フェーズ×組織規模で見る「BtoBマーケティング」

日本のBtoBマーケはなぜ遅れているのか?海外の最新トレンドと日本企業の課題を庭山さんに聞いてみた

リーダー層のMBA取得率が低い日本企業

──危うい状況を打破する鍵はどこにあるのでしょうか?

 アンゾフマトリクスを考案したイゴール・アンゾフ氏は「3S」という概念も提唱しています。「Strategy(戦略)」「Structure(組織)」「System(システム)」の頭文字から成り立つ3Sは、ツール選定の際に有効な考え方です。

 まずは戦略を立てる。次にその戦略を実現するための十分な量と質を備えた組織をつくる。コンテンツをつくる人がいない状態でMAを導入しても、つまらないメルマガを量産して配信停止につながってしまいます。社内でリソースを賄うのが難しければ、一部アウトソースしても構いません。組織がつくられると「何を誰がやるか」が見えてきますから、それが要件となって最適なツールを選ぶことができるのです。

──組織づくりやシステムの導入は、マーケティング部門以外も関わる話ですね。

 米国でも欧州でも、マーケティング担当者が頑張れば頑張るほど社内で浮いてしまうのは同じなんです。ただマーケティングは偏差値ですから、営業担当者もプロダクトの開発担当者も経営層も、マーケティングをある程度理解できなければならないでしょう。米国企業の営業会議に参加したこともありますが、マーケティング担当者がいない場でもMQLやSALなどの用語はあたり前に出てきます。

 先進国の中でも、日本企業のマネージャー以上のMBA取得率は著しく低いんです。MBAを取得したところでマーケティングのプロにはもちろんなれませんが、STP分析や5フォース分析が理解できるレベルには到達します。日本企業のBtoBマーケティングを進化させるためには、企業全体のマーケティング偏差値を上げる取り組みが不可欠です。

日本企業こそABMで勝負すべき

──逆に、日本企業が秀でている分野はありますか?

 日本企業が勝てる分野があるとすればABMだと思います。なぜなら日本のアカウントセールスは優秀だからです。多くの日本企業において、メインクライアントを担当するのは生え抜きのエース、つまり将来の幹部候補でしょう。歴代の先輩たちが大事にしてきた得意先は、信頼できる担当者にしか任せられませんよね。そして日本企業は米国企業ほど離職率が高くありませんから、エースが残りやすく彼らの自社製品に対するロイヤルティも高まりやすい。ラストワンマイルが強い日本のBtoB企業こそ、ABMで勝負すべきです。

──最後に、悩めるBtoBマーケターに向けて庭山さんからメッセージをお願いします。

 日本のGDPを支えているのはやはりエンタープライズなんです。ここが元気にならなければ日本の経済も落ち込んでしまう。そんな中、多額のツール投資を経て売上に対する貢献度合いを上層部から厳しく問われている今のエンタープライズは危うい状況と言えます。逆にスタートアップは創業当時からマーケティング部門やCMOを設置しているところが多く、サブスクリプション型の業務アプリケーションはラストワンマイルも販売代理店も必要ないため、そこまで心配していません。

 BtoBマーケティングの素晴らしさは、座学と実務の綾織りで腕を磨ける点にあると私は考えています。ところが現実は7:3で実務の割合が大きく偏ってしまっている印象です。なるべく多くの情報をインプットしながら、マーケティングの偏差値を上げていきましょう。

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2023/10/18 09:30 https://markezine.jp/article/detail/43764

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