自由にカジュアルに「好き」に情熱を注ぐ「流動的ファン」
少し前まで、潜在的なファンは知識や熱意があることを証明しなければ、ファンダムに受け入れてもらえず、まともに相手にすらしてもらえませんでした。ところが最近はずいぶんと柔軟になっています。
新しい主流のファンコミュニティは、ファンダムへの愛を表現する方法はいくらでもあることを理解していますし、カジュアルなファン同士の交流を歓迎しています。
このような現代のファンを「流動的ファン」と言い、彼らは自分以外のファンがどのように情熱を表現するかということよりも、新しいコンテンツを発見し、それに関わって自分が楽しむことのほうを重視するそうです。また、同時に様々なコミュニティを通じて自分を表現することに充足感を感じています。
調査で、アニメからテックガジェットまで10種類の幅広いファンダムのリストを見せたところ、流動的ファンは平均7.6種類のファンダムを楽しんでいると回答しました。そのくらい、ファンダムへ参加するハードルが低くなっているということです。
こうした多様化の動きは、個々のカテゴリーの中にまで及んでいます。どういうことかと言うと、たとえば、調査対象となった音楽ファンは平均4種類の音楽ジャンルを楽しんでいると回答し、ゲームファンは平均5.8種類のゲームジャンルを楽しんでいると回答しました。これは、各ジャンルへの深さを気にせず、純粋にファンダムにいることを意味します。
ファンダムを入り口に、ブランドのファンを作っていく
人々が「好き」に傾ける情熱をインクルーシブに解釈し、発見、学習、つながりを求めるようになった結果、ファンダムはブランドにとっても人々と接点を持てる強力な場となりました。
調査対象者の61%は、ブランドがファンダムに関連するコンテンツを応援したり、制作に関わったりするのを見て楽しんでいると回答しています。元々、多様性と受容性の高いオーディエンスにとって、自分の所属するファンダムに関与してくれる企業のブランドエクイティや第一想起率が向上することは、容易に想像できるでしょう。
ただ、ファンは様々なチャネルを利用して、ファンダムへの情熱を注いでいます。エンターテインメント、学習、インフルエンサー、専門家などとリアルタイムに繋がりたい場合にはTwitchなどのライブストリーミング配信を選択し、それ以外のモーメントでファンと交流したい場合にはソーシャルメディアなどを定番のチャネルとしています。
ブランドが流動的ファンの力を効果的に活用するには、彼らの行動やその背景だけでなく、場所や方法も知っておく必要があるでしょう。
現代のファンは、制限や排他性と引き換えに、ダイバーシティのある友好的なコミュニティを手に入れました。既成概念にとらわれた考え方やルールを捨て、流動性や多様な「好き」を持ち、様々な方法でそれを表現しています。つまり、「ファン」という概念や、ファンが形成する「コミュニティ」が進化を遂げていると言えます。
そして、ファンが多くの時間を過ごすファンダムへの扉は、ブランドにも開かれています。現在のファン文化をより深く理解することで、ブランドはファンを惹きつけ、ファンダムとの関係性を深め、自社の熱心なファンダムを拡大していくことができるのです。
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