日本企業のブランディングが「ふわっと」しているのはなぜか
木村:田部さんも僕も今年翔泳社から書籍を出しています。いずれの書籍も「マーケティング施策の効果検証に用いる新指標」と「ブランド力の強化」を解説したもので、アプローチこそ違いますが、考え方のベースは共通していると感じています。
今日はブランディングについて、様々なテーマで議論させていただく予定ですが、まずはMarkeZine編集部からの質問です。そもそもブランディングはなぜこうにも「ふわっと」しているのだと思いますか?
![株式会社Brandism 代表取締役 木村元氏ユニリーバ・ジャパンに2009年に入社。約14年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360度のプロモーションからグローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にて、ダヴヘアのグローバル全体のブランド戦略をリード。その後、ユニリーバ・ジャパンでのスキンケアカテゴリー統括とグループ子会社のラフラ・ジャパンの代表取締役を兼任し、PMI後のV字回復を達成。2021年より株式会社Brandismを創業し現職。BtoBからBtoCまで、国内外の多様なクライアントのブランド戦略立案や経営戦略を支援。著書『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』が2023年12月に刊行](https://mz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/44179/44179_2.jpg)
ユニリーバ・ジャパンに2009年に入社。約14年間、ラックスやダヴなどのブランドマーケティングを経験。国内を中心とした360度のプロモーションからグローバルのブランド戦略や製品開発まで、幅広く従事。ロンドン本社にて、ダヴヘアのグローバル全体のブランド戦略をリード。その後、ユニリーバ・ジャパンでのスキンケアカテゴリー統括とグループ子会社のラフラ・ジャパンの代表取締役を兼任し、PMI後のV字回復を達成。2021年より株式会社Brandismを創業し現職。BtoBからBtoCまで、国内外の多様なクライアントのブランド戦略立案や経営戦略を支援。著書『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』が2023年12月に刊行
田部:それは深遠となるような問いですね。ブランディングが「ふわっと」しているのはなぜか? それは、ブランディングというビジネス領域があるからだと考えます。ブランディングの定義はたくさんあって曖昧であるほうが、解を求めて頼る人が多くなり、ビジネスとして成立しやすくなるのではないでしょうか。
木村:なるほど、なるほど。
田部:“ブランド力”にも定義は様々あり、世の中のブランディング施策は「認知度」や「好感度」の指標を上げることを目指すものが大半です。しかし「好感度が高く、テレビCMにも好意的だが、購入したことは一度もない」というような商品もあると思います。一方で、「あまり深く考えず、慣習的に購入する」商品もあります。私の場合、整髪料の『uno』がまさに該当する商品です。中学生の頃から長く愛用しているので、慣習的に購入しています。
![1980年生まれ。中央大学卒業後、丸井グループに入社。主に広報・宣伝活動などに従事。2007年テイクアンドギヴ・ニーズ入社。営業企画、事業戦略、マーケティングを担当し、事業戦略室長、マーケティング部長などを歴任。14年8月にラクスルに入社。マーケティング部長を経て、16年10月から現職に就任。18年より、これまでのラクスルの成長を約50億かけてドライブしてきたマーケティングノウハウを詰め込んだ新規事業、運用型テレビCMサービス「ノバセル」を立ち上げる。2022年2月分社化、ノバセル株式会社の代表取締役社長に就任。著書に『ブランド力を高める「指名検索」マーケティング 顧客の検索行動を決める、動画広告の活かしかた』がある](https://mz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/44179/44179_3.jpg)
1980年生まれ。中央大学卒業後、丸井グループに入社。主に広報・宣伝活動などに従事。2007年テイクアンドギヴ・ニーズ入社。営業企画、事業戦略、マーケティングを担当し、事業戦略室長、マーケティング部長などを歴任。14年8月にラクスルに入社。マーケティング部長を経て、16年10月から現職に就任。18年より、これまでのラクスルの成長を約50億かけてドライブしてきたマーケティングノウハウを詰め込んだ新規事業、運用型テレビCMサービス「ノバセル」を立ち上げる。2022年2月分社化、ノバセル株式会社の代表取締役社長に就任。著書に『ブランド力を高める「指名検索」マーケティング 顧客の検索行動を決める、動画広告の活かしかた』がある
では、マーケティングにおいて前者と後者のどちらが優位かというと、圧倒的に後者だと考えています。理由は「売れているから」です。前者の「好感度が高い」という状態を作っても、売れていないのならマーケティングが成功しているとは言い難いです。好感度と売上が連動しているような場合は、俗に言うブランディングに投資することで効果が見込めますが、あまり相関性が認められる事例はありません。
「ブランディングに予算投資をしたものの売上が伸びなかった。そこで、原因を探るために好感度分析をしてみると、好感度は高くなっていた。けれど、売上に貢献したかはわからない」というような話が横行している印象があります。
木村:ブランディングも売上と利益に繋がらないと意味がない、という考えは私も強く持っています。そうした曖昧な状況を良くしたいと思って書いたのが『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』です。
田部:私も曖昧な結果しか残らない「ゆるふわブランディング」には提言していきたいです。