「ついやりたくなる」を作り、行動変容を促す訴求を作るには?
ここからは、「ついやりたくなってしまう」を喚起するフレームワークを利用します。やりたくなった経験を自由に出して、今回の促したい行動とかけ合わせてみます。
例として、「テレビ番組でクイズが出されると答えたくなる」経験を防災訓練と掛け合わせてみます。ポスターなどに防災に関するクイズを掲載し、正解は防災訓練当日に発表とすることで、参加したい気持ちを喚起するアイデアが浮かび上がりました。
また別の経験として「おもしろそうな映画のポスターを見ると観に行きたくなる」にかけ合わせると、一見して防災訓練とわからないような映画風のポスターで告知をすることで、行動変容を促せそうです。
今回は、映画風のポスターで訴求する方針で考えていきます。告知方法の方向性が見えたら、続いては具体的に防災訓練の中身を設計します。
人間の8つの属性から「やり続けたくなる」を設計
このフェーズでは、連載の第4回で紹介した「ついやり続けたくなってしまう」粘着性設計のフレームワークを活用します。
人間の持つ8つの属性とそれぞれを構成する9つの要素をもとに、粘着質な体験を実現する防災訓練を考えていきます。まずは防災意識の向上を目指していく方向性に沿った時に、人間のどの属性に訴求すべきかを考えます。
防災意識の向上という観点で重要なのは、当事者意識と共助の考え方です。これにはそれぞれ「固有性」「社交性」が対応します。本フレームワークでは隣接属性は親和性が高くなるよう配置しているため、隣接する「創造性」も対象に選定します。
次に、3つの属性に対しそれぞれ訴求ができるように要素を選択。各属性に対する9要素を眺めながら、どのような体験が作れるかを考えていきます。
今回は、体験として防災訓練に組み込めそうな以下の要素を選択しました。
【固有性】
・仮想敵:敵グループやボスなど敵対する相手が存在する
・世界観:サービス内のストーリー設定が定義されている
【創造性】
・試行錯誤:繰り返し改善のチャレンジができる
・勝利条件:どうすれば勝利なのか条件が明示化される
・共創:仲間と共に作り上げる
【社交性】
・共闘:仲間と共に勝利条件を達成することが有利である
これらの要素を考慮すると、「仮定のストーリーの中で共通目標を達成するために、参加者同士が協力して試行錯誤をしながら何かを作り上げる」体験が作れそうです。防災訓練にあてはめると、たとえば「隕石が衝突するという仮定のストーリーの中で、迫り来る災害から身を守るために参加者同士が協力しながら避難所を作り上げる」体験が考えられます。
