便利さにともなう責任
人物を撮影する場合には、肖像権について考える必要があります。肖像権を簡単に説明すると、自分の肖像(顔、容ぼうなど)の撮影を拒める権利のことです。この権利から考えると、たとえば、通りすがりにいきなり撮影された場合、撮影された人は、カメラマンに対して、その画像の削除を要求してもよい、と解釈できます。
肖像権の考え方自体は昔からあったものですが、芸能人やマスメディアなど、特別な状況で問題視されるケースがほとんどでした。しかし現在は、デジタルカメラとインターネットの普及により、誰でも手軽に撮影と、その写真の公開が可能になり、身近な問題となったわけです。
個人情報保護法によると、明らかに個人を特定できる写真は、個人情報に該当します。1人ひとりが、慎重に写真を扱うことが求められています。
自由に撮影できるのは、空だけ?
写真には、スナップ写真など、被写体がカメラを意識していないシーンを撮影するジャンルがあります。被写体の立場に立つと、「勝手に撮られた写真」ですが、撮影者にとってみれば、「シャッターチャンスをとらえた作品」であり、表現の自由を主張できるわけです。両者の言い分を聞いてジャッジするのは、非常に難しい問題でしょう。
作品に、人物が少しでも入れば肖像権がからんでくる、ならば一切人物は撮ってはいけないのか。こうした発想だと、写真撮影は、規制が多い面倒なものとなってしまいます。
さらにいえば、建物や土地など、所有者がいればそこには所有権があります。それらを撮影するのに、すべて許可が必要となれば、この先、自由に撮影できるのは、それこそ空(そら)くらいしかなくなってしまうかもしれません。