ドライクリスタルのコンセプトと目指す未来は?
お客様からのポジティブなフィードバックを受けて、まだ顕在化していない市場であっても、ミドルレンジアルコールに潜在的なニーズがあるという確信から、ドライクリスタルが誕生した。
商品名の「クリスタル」には、“透明感のあるクリアな後味”を表現するとともに、“お客さまの人生を躍動的で充実した輝かしいものにしたい”という思いが込められた。
缶のパッケージは通常の「スーパードライ」のデザインを踏襲しているが、八角枠とプルタブに赤色を採用。ブランド初の赤タブが強力なアイコンとなり、缶の中央には、商品の特長である「3.5%」が大きく記載されている。

パッケージ以上に中身へのこだわりも相当なものだった。何よりスーパードライブランドとしての味を維持するのは非常に難しい課題だったという。玉手氏は「ミドルレンジの商品開発手法の定石を覆す挑戦になった」と当時を振り返る。
たとえば、ミドルレンジ商品では一般的に加熱処理が行われるが、スーパードライではドライな味わいを実現するために生製造にこだわっている。そのために原材料の配合に関する研究が重ねられた。
また、アルコール分を下げるとお酒の風味が軽くなる傾向にあるが、そこでも透明感あるキレを生み出すために、冷涼感が特長のドイツ産ホップ「ポラリス」を一部使用。通常の「スーパードライ」よりも発酵度を上げて醸造する「ドライクリスタル製法」も導入し、シャープでキレのあるクリアな味わいと本格的な飲みごたえを実現した。
この新商品を通じてアサヒビールは、アルコール度数5%が中心のビール類市場に「ミドルレンジ」の新市場を創出し、新たな選択肢を提供することを狙う。将来的にミドルレンジ商品が当たり前に普及している未来を目指し、「未来志向のビール」というコンセプトが打ち出された。
この未来志向のビールを浸透させる上で重要なのが、「ビールは飲みたいけど、酔いすぎて何もできなくなるのは避けたい」「心身ともに健やかで自分らしいビールライフを送りたい」といったインサイトだ。これらのインサイトから「日々の充実のために、ポジティブにビールを引用する層」をターゲットに設定し、コミュニケーションを展開していった。