変化する若年層の「ラジオ」の定義
「ラジオ」という言葉の定義は、年代によって違うのかもしれません。以前に仕事で大学生と話をする機会があり「ラジオを聴いていますか?」と尋ねたところ、学生は「聴いています」と答えました。そこで何のラジオか質問すると、「YouTubeの『〇〇〇』の番組です」と返ってきました。
私はニッポン放送の「オールナイトニッポン」やTBSラジオの「JUNK」のような地上波のラジオ番組を想定していましたが、その学生はYouTube配信者の番組を挙げたのです。今の若年層にとって、音声の聴けるコンテンツであればYouTubeもポッドキャストも「ラジオ」という認識なのかもしれないと気づきました。
「オードリーのオールナイトニッポン」など人気ラジオ番組のディレクターを努めたニッポン放送の石井 玄氏も、以前にX(旧Twitter)で下記のようなポストをしています。
YouTubeでラジオっぽい面白い配信が出来ると、それならラジオの定義って何だろうかと思います。Podcastもあるし、他の音声メディアもあるし、ラジオには逆に映像つけたりしてるし、難しいです。リスナーと一緒に面白いことを作ること、とかですかね。
人によっては「ラジオ」という言葉の認識は、音の聴けるメディア全般を指す言葉なのだとしたら、現在の若年層の目に音声メディアは新しいものとして写っているのかもしれません。本記事は、若者の音声メディアへの関わり方を「つながり」「タイパ」の二つのキーワードから分析していきます。
Z世代が音声メディアに求めるもの
インターネットラジオの一つであるポッドキャストの国内利用率は、10~20代がとくに高いという調査結果が出ています。また24メディアの利用率比較でも、ポッドキャストはTikTokに次ぐ8位に位置しています。
Z世代にとって、音声コンテンツはどのような意味を持つのでしょうか。そのヒントとなる興味深い調査結果があります。
音楽とポッドキャストのストリーミングサービスであるSpotifyの2022年の調査によると、世界のZ世代に最も聞かれているポッドキャストジャンルは「メンタルヘルス」でした。2022年第1四半期におけるZ世代のメンタルヘルスのストリーム数は、前年比で約62%も増加しています。
ポッドキャストはSpotifyやApple Podcastで聴けるインターネットラジオの一種ですが、音声コンテンツを能動的に自己選択して聴くためユーザーの嗜好がダイレクトに現れるという特徴があります。
この結果は、まだコロナ禍の影響が色濃く残るタイミングでの調査という背景もあったかもしれません。しかし、Z世代によく聴かれたジャンルが孤独を癒やしメンタル面のヒーリング効果を期待するものだという結果は、音声コンテンツの役割を象徴しているように見えます。