味の素のマーケティングデザインセンターは、週に2回以上自宅で食事をしている人を対象に、「コロナ禍前後における価値観の意識調査」を実施した。
7割超がSNSでの「映え」や「盛り」に疲れや飽きを感じていると回答
まず、コロナ禍前で「SNS映え」や「盛る」という行為に対しての感じ方の変化を調べた。その結果、コロナ禍前後で一貫して「飽き」や「疲れ」を感じる人は56.3%となった。コロナ禍前に比べると「飽き」や「疲れ」を感じるという人と合わせると、全体の73%がSNSでの「映え」や「盛り」に対して魅力を感じていないという結果になった。
また、若年層である10代~20代女性の結果を見ても、5割以上が「飽き」や「疲れ」を感じていることがわかった。
約半数が日用品の購入時に「暮らしに欠かせないもの」「長く使えるもの」を重視
次に、食品や衣服などの身近な日用品を購入する際に重要視していることを調べた。その結果、コロナ禍前と比較して、「長く使えるもの」が55.7%(+11.4pt)、「暮らしに欠かせないもの」が49.0%(+10.6pt)となった。一方、「話題・トレンドのもの」や「華やかなもの」はコロナ禍前後で1pt前後減少していた。
また、その理由を尋ねたところ、「一過性ではなく、本質的な価値を求めるから」という回答が48.1%で最多となった。他にも、「表面上のものではなく、内面的なこだわりへの評価から」が28.8%、「自然体への共感から」が23.8%見られた。
これらの結果から、長く使えるものや暮らしに欠かせないものを求める背景には、本質的な価値を重要視し評価することが、購買行動として定着しつつあるためと推察される。
「地味」という言葉に対しポジティブなイメージも
最後に、「地味」という言葉に対して抱く印象について調査した。既存のイメージである「目立たない、控えめ」が71.1%とトップだった。しかし、「堅実、地に足がついている」が23.2%、「影の主役、周り(他者)を活かす引き立てる」が11.2%とポジティブな回答も一定数見られた。
同調査結果に対して、消費経済アナリストの渡辺広明氏は次のように分析している。
「特に象徴的なのは10~20代の女性の約55%が、SNSの『映え』にもはや魅力を感じていないという事実です。『映え疲れ』という言葉は、以前から叫ばれていましたが、本調査の対象である15~29歳は、新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年には12~26歳頃。SNSを使い始める、あるいは頻繁に使っていた年頃に、外出が制限され自宅で楽しめるコンテンツが増え、不特定多数の人と集まるより、親密な人と一緒に過ごす機会が多くなった世代です。そう考えると、目の前の現実と乖離したSNSでの『映え』に対して、魅力を感じないのも納得できます。実際に最近では写真加工を行わず、その時々のリアルな姿を共有するアプリや、盛らないプリクラが若い世代で流行を見せています。
また、10~20代女性の消費の判断基準で、コロナ禍前よりも、長く使えるものや、暮らしに欠かせないものを重視するという傾向も見受けられました。これはサステナビリティへの意識の高まりや相次ぐ物価上昇が影響しているとみられます。私たちの身近な存在であり、日本のマーケットの縮図でもあるコンビニでも、そのような価値観は表れており、商品一つ一つに、価格や一過性の流行ではなく、専門店と同様のクオリティや体験が求められるようになりました。
Z世代は一般的に1990年代後半〜2010頃に生まれた世代と定義されることが多いですが、彼らが今、消費やコミュニケーションに求めているのは、表面上ではない本質的な価値であり、本調査でも内面的なこだわりを追求したいという新しい若者像とその価値観が表れていると言えます。今後、このような『地味』なものへの注目はますます高まり、Z世代に限らず多くの世代に広まっていくかと思われます」
【調査概要】
対象者:週に2日以上自宅で食事をしている全国の10~60代の男女
有効回答数:計1,056人
期間:2023年11月15日~11月17日
方法:インターネット調査
内容:コロナ前後における価値観の意識調査
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