精度とセキュリティの高さでユーザーから支持を集めるDeepL
MZ:はじめに、ジョーンズ様のこれまでのご経歴や、DeepLにおける担当領域、ミッションなどについてお聞かせください。
ジョーンズ:私は現在、DeepLで「CRO(チーフレベニューオフィサー:最高収益責任者)」として、グローバルの業績が拡大するための各種管理を担っています。これまでMicrosoft、Vmwareなどに在籍し、当社に入る前はクラウドコミュニケーションプラットフォームを展開するTwilio(トゥイリオ)で日本を含むAPAC(アジアパシフィック)地域の責任者を務めました。
私がDeepLへの入社を決めたのは、「お客様が抱える言語の障壁を取り除き、円滑なコミュニケーションを支援する」というミッションステートメントに共感したからでした。当社ではこのミッションを基に企業向けの翻訳サービス展開に注力しており、この取り組みを通じて企業が新たな市場に参入するサポートを行っています。
MZ:DeepLのサービスについて概要を教えてください
ジョーンズ:DeepLは、2017年にサービスを開始した機械翻訳サービスです。当社は、機械学習などの最新技術を翻訳の仕組みにいち早く採用しており、翻訳精度の高さがサービスの特長です。現在では、無料版と有料版「DeepL Pro」の2種類のプランを用意しています。
ユーザーが翻訳サービスに求めるものは、翻訳の精度はもちろんですが、個人情報の保護、法規制の遵守などを挙げることができます。私達の会社は、ドイツで創立したという背景もあり、GDPR(EU一般データ保護規則)やISO表示などの対応をしっかりと行ってきました。さらには自社でデータセンターを保有しており、作業中および送信中のデータの暗号化まで行っていることから、ビジネスにおいても安心して活用いただけます。
また、有料版においては、利用者が翻訳に使ったデータが保管されることはない上にAIの学習にも翻訳データは使われません。そのため、有料版のユーザーは法令を遵守して活用できます。
特定の産業向けにマーケティングを実施
MZ:現在のグローバル市場におけるDeepLの利用状況と、DeepLが行っているマーケティング戦略についてお聞かせください。
ジョーンズ:私達の製品はこれまで、ヨーロッパを皮切りに日本や北米などの地域に拡大し、グローバル規模でビジネスを強化してきました。
2024年3月現在、無料版のアクティブユーザーは数百万人以上となっています。有料版でも契約者数は100万人以上、全世界で10万を超える企業や政府機関が利用しています。サービス開始以来、DeepLは翻訳の質の高さゆえに、利用者による口コミで自然にユーザー数が増えていきました。この傾向は、法人向けサービスにおいても同様でした。
ただ、2023年から、私達はマーケティング戦略として大企業および特定の産業向けのアプローチを行うようになりました。特に多くの翻訳を必要とする企業や、新たな市場への参入を図る企業、海外拠点を持つ企業などがターゲットにあたります。これらの企業にブランドキャンペーンや、ケーススタディの収集と発信を行っています。