マーケター1年目、「未経験の壁」の要因を洗い出す
では、「未経験の壁」にどのように立ち向かい、乗り越えればいいのでしょうか。実際に乗り越えた方が最初に感じていた悩みを紹介しましょう。
1人目は、生活協同組合ユーコープ 宅配営業企画部 宅配営業企画課の小出純さんです。小出さんが新卒で入職した時は「おうちCO-OP(おうちコープ)」のドライバーで、営業への転身を経て、現在はマーケティング職で活躍しています。

おうちCO-OPの会員になるまでのプロセスは、競合他社と異なり、基本的に営業を通すのが特徴です。たとえば、見込み客がオンラインキャンペーンに申し込むと、営業が訪問して「会員になりませんか?」と戸別訪問をします。しかし共働き家庭では、日中に訪問しても誰も家にいない。電話もしますが、お客様の会員登録の確度がわからないまま、リストの上から順に訪問することに、営業として限界を感じていたそうです。
小出さんの場合、営業経験があったこと、ドライバー時代から顧客体験のこともある程度はわかっていたこともあって、下地は比較的整っていました。とはいえ、デジタルで多くのお客様に良い体験を届けるかは別のこと。マーケティングに関する理解がなかったことが悩みだったようです。
2人目は、旭化成エレクトロニクス デジタルマーケティング部の井上望さんです。彼女も他部署から異動してマーケターになった1人です。

旭化成エレクトロニクスの場合、マーケティング強化はトップダウンで決まりました。井上さんも新卒で入社してから、電子部品のアナログ・デジタル回路の設計の仕事を経て、コンテンツ制作の部署に異動。設計をやっていた分、自社の製品のことはよく知っていて、その製品をどんなお客様に提供するかも比較的理解していたのですが、マーケティングはゼロからのチャレンジでした。
外部を巻き込むことも手段の1つ
小出さんと井上さんに共通する悩みは、2つ目の「マーケティングがわからない」にありました。また、お二人ともデジタルマーケティングを実践する体制とプロセスを整えるというミッションを持っていました。これらを実現すべく、走りながら考えて壁を越えた形です。
「マーケティングがわからない」は、自社が目指すべき姿がわからないことでもあり、大変厄介です。会社として新しいことを始める場合、「上司に助けてもらえば?」と思うかもしれませんが、上司にとっても初めてのことですので、常に適切な助言が得られるとは限りません。「このやり方で正しいのか?」と1人で取り組んでいても、初心者でなかなか成果が出ないこともあるでしょう。会社からも「あそこは何をやっているんだ?」と白い目で見られてしまい、打開策が見いだせなくなるケースも少なくありません。
今回「未経験の壁」を越えられたのは、社外の力を借りられたことが大きかったと思います。お二人の上司がお金のかかる外部へのコンサル委託に投資する判断をしてくれたことで、現場はデジタルマーケティングを加速させることができ、結果的に自社単独でやるよりも、短期間での新しい仕組みの構築につながったと思います。両社とも、外部のコンサルを導入してMOpsのプロセスを構築し、定着させることに成功しています。
ここで誤解しないでほしいのは、コンサルを使った方がいいという結論ではないことです。なぜならば、外部のコンサルの力を借りるにしても、自社が目指すべき姿は自社にしかないからです。マーケターになった担当者自身が学ぶことにしか、見つける方法はありません。だからこそ、新しい仕組みを運用するマーケター自身が、「テクノロジー」「マーケティング」「お客様」のことを深く知ることが大切なのです。