車の購買に至る行動ログを明らかに
安室氏は、約3年半のディーラーでのセールス経験などを経て、デジタルマーケティング基盤の構築担当をはじめDXを推進してきた。現在は、新規獲得とリテンションを手掛けるそれぞれの部署を統括している。
SUBARUが収集するデータの特徴は、全国44あるディーラーすべての行動ログデータを一括で把握できることだ。顧客情報や注文情報はもちろん、ディーラーの店舗で提供されているフリーWi-Fiへのアクセスログや試乗イベントおよびキャンペーン、オーナー向けのアプリやドライブアプリ、オンラインショップ、Webサイト・ディーラーのサイト、広告配信などあらゆる情報を収集。「SUBARU ID」という統一IDで統合管理している。安室氏は「社内とディーラーが同じデータを見ながら会話ができる状況を作っています」と話した。
SUBARUが本格的にデータ収集に着手したのは2017年頃。以前は、顧客は店舗でカタログをもらったり店員の話を聞いたりした上で、購買行動に至るケースが多かった。一方、現在はWeb上で細かく調べてから来店し、試乗して決めていく。安室氏は「企業側から購買行動が見えない“トーナメント戦”を勝ち抜いていかなければ、顧客に店舗まで来ていただけなかった」と述べ、店舗への来店回数が減っていく中で購買に至る行動ログを明らかにし、カスタマージャーニーを描く必要性があったと振り返る。
データの統合における3つのポイント
今ではSUBARUは組織的にデータを活かしたマーケティングを実践しているものの、安室氏によれば多くの壁に直面しながら進める必要があったのだという。安室氏は当時の経験を踏まえ、データの統合という壁を乗り越えるために留意する3つのポイントを紹介した。
1つ目は、基幹系システムに手を触れないこと。「基幹系システムは必ず当たる壁だが、“触るな危険”だと思っていい」と安室氏は語った。2つ目は、SaaSを組み合わせて始めることだ。当時は少なかったものの現在は様々なサービスが提供されているため、まずはSaaSを組み合わせて始めることを勧めている。
3つ目は、必要なデータの選択と集中だ。システムを作ろうとすると、つい多くのデータを求めたくなってしまう。だが後になって振り返ると結局使わず、ごみ箱のようになっているデータが出てくるため、目的を整理した上で必要なデータを選び集中して実施することが重要だ。