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MarkeZine Day 2025 Retail

2024年度の消費者トレンド予測—生活者の消費行動とメディア利用の変化—

2023年度は「安さ納得」や「利便性」重視に NRIの分析からわかった消費とメディア利用の動向

広告効果の減少を引き起こす過剰な広告出稿

 広告におけるメディア利用の拡大鈍化に加え、広告業界全体が抱える問題として、消費者が日常的に接する広告の量が過剰な点が近年指摘されている。デジタルメディアにおいてはフリークエンシーに加えてビューアビリティの問題が顕著で、ユーザーのコンテンツ視聴を阻害して画面上に表示される広告の掲出形態に関しては、多くの生活者が不快と感じている

 NRIの調査結果からも、多くのユーザーが広告をスキップしている上に、スキップしていなくても広告をほぼ見ていないことがわかる。過剰な広告表示とユーザー体験を損なう掲出形態は、結果として広告の効果を低下させる原因となっている

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(画像左)動画広告のスキップ率(2023年9月)、
(画像右)動画広告(YouTube)が流れた際に取る行動​​​

 さらに、テレビCMに関しても同様に課題がある。スマホの普及とともに、テレビを見ながらスマホを操作する「ながら視聴」の割合が増加。2023年3月にNRIが調査したデータによれば、全世代で6割以上がテレビ画面を注視していないと回答していることもわかった。このような視聴習慣は、テレビCMの認知率を下げる一因となっており、広告主にとって大きな課題となっている。

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テレビの「見方」(ながら見、ながら聞き)

 当然、広告主にとっては「いかに広告を注視してもらえるか」が重要だ。そのため、広告主とメディアベンダーは消費者の関心を引きつける方法を考え出す必要がある。テレビでもデジタルでも効果的な解決策が見つかっていない現状では、自社の広告認知を向上させる手段の発見が課題となっている。

SNS広告への注目とOne to Oneマーケティングへの再挑戦

 では、広告が溢れる現状において消費者からの関心を得る広告を作るにはどうしたらよいのか? 筆者は消費者の生活パターンや好みを反映したターゲティングを行い、彼らの興味やニーズに合致した内容の広告を、いかに不快感を与えることなく提供できるかがカギになると考えている。

 この文脈で特に注目されるのがSNS広告だ。SNS広告は消費者の一人ひとりの趣味や好みを特定し、適した広告の表示が可能だ。加えて、動画広告と異なり、コンテンツの視聴体験を強制的に中断するような広告表示が行われない。趣味の情報収集の中に織り交ぜて、より自然な形で広告掲示ができることから受け入れられやすい広告の一つとなっている。

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(画像左)不安に感じる広告の出稿形式、
(画像右)動画広告を不快に感じる理由

 また、2023年度からは、One to Oneマーケティング(O2Oマーケティング)への関心が再燃してきたのも特徴的だ。この手法は、技術的な制約やデータ活用の難しさから、以前は限られたデジタルマーケティングの分野でしか実施できなかった。しかし、技術の革新によって多くの分野で可能になったことで、再度注目を集めているのだ。

 O2Oが可能な媒体としては特に「リテールメディア」が注目を集めている。これまでのO2OマーケティングではOne to Oneと呼べるほど細分化された”マイクロセグメンテーション”を指していた。しかし、今後は顧客一人ひとりの購買データや行動データを活用する言葉通りのOnetoOneマーケティングにより、個々にカスタマイズされた広告配信の実施が期待されている。現時点では、まだまだ発展途上の分野だが、「どうすれば広告に注目してもらえるか」という問題への解答として、将来的に大きな注目を集める可能性がある。

 ここまで見てきたように、コロナ禍を経て、消費者の興味は細分化されるようになった。その上、消費者が持つ興味の外側のものに対する注意・関心は極力そぎ落とされ、興味の内側に対して時間やエネルギーが効率的に注ぎ込まれるようになった。このように消費行動の「選択と集中」が進んだことは近年の特徴的な変化の一つだと著者は考える。だからこそ、SNS広告やリテールメディアのような対象に合わせてパーソナライズできるコミュニケーションの手段が、消費者の注意を引き、関心を持続させるためのカギになる。

 次回はこれらのトレンドを踏まえ、今後の消費・メディア利用のトレンド予測とマーケティング活動において注意すべきポイントを解説する。

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2024年度の消費者トレンド予測—生活者の消費行動とメディア利用の変化—連載記事一覧
この記事の著者

松下 東子(マツシタ モトコ)

野村総合研究所 コンサルティング事業本部 マーケティングサイエンスコンサルティング部 チーフコンサルタント

 1996年東京大学大学院修了後、野村総合研究所入社。以来、一貫して消費者の動向について研究し、企業のマーケティング戦略立案・策定支援、広告・プロモーション効果測定および広告戦略策定支援、ブランド戦略策定...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

森田 光一(モリタ コウイチ)

野村総合研究所 コンサルティング事業本部 マーケティングサイエンスコンサルティング部  エキスパート

 調査・コンサルティング会社を経て、2016年に野村総合研究所に入社。データ分析によるマーケティング/プロモーションの戦略構築・効率化支援に従事。感覚のみによるマーケティングからの脱却を念頭に、データ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/17 09:00 https://markezine.jp/article/detail/45196

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