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「今の弱い日本を少しでも明るく」元ネスレ日本 社長 高岡浩三氏が21世紀のマーケターに伝えたいこと

「日本は誰が社長をやっても同じ」と見捨てられ、初の日本人社長に

 高岡氏は1983年にネスレ日本に入社し、失われた30年のうち20年間を同社で過ごした。 

 当時はまだキットカットのようなヒット商品もなく、コーヒーの売上はピークだった1987年からずっと右肩下がり。グローバルの売上が毎年平均で5%増えていた一方で、日本は高岡氏が社長に就任するまでの1990~2010年の20年間、平均-3.8%で売上を下げ続けていた。優秀な若手社員の離職も相次いでいたという。

 そんな中、高岡氏は日本人で初めてネスレ日本の社長に就いた。社長就任の理由について、同氏は「人口が減り、高齢化が進んでいる日本市場は誰がやっても同じ。優秀な外国人社長にするのはもったいなく、見捨てられたのだろう」と話す。

 国が発展していくと、少子化により市場が縮小する。次第に、売上・利益は降下していく――日本は先進国が陥る衰退の典型例になっていた。グローバルの役員たちも「日本みたいにはなりたくないね」と口をそろえたそうだ。

 だが、言われっぱなしは悔しい。高岡氏は「もしこの日本で売上と利益を毎年伸ばせたら、将来ヨーロッパ先進国のお手本になる」と社員を勇気づけた。高岡氏には、社長就任以前にキットカットの売上を40億円から400億円に伸ばした実績があるものの、依然としてネスレ日本全体の売上は落ちていた。

 状況を打開するためには、「21世紀型の新しいマーケティングとイノベーションしかない」と考えた。

産業革命が起きている今こそ「イノベーション」を

 高岡氏はマーケティングを「顧客の問題を解決することによって付加価値を作る活動」と定義している。「顧客の問題」に焦点を当てると、イノベーションの定義もクリアになってくる。

 市場調査で顧客がどんな課題を持っているのかを導き出し、それらの解決を図ることは「リノベーション」にしかならない。対して、「イノベーション」は、そもそも顧客が問題だと思っていないか気づいていない、あるいは諦めている問題を解決することだ。この違いが、実は非常に重要なのだと高岡氏は強調する。

 「イノベーションとリノベーションの違いをはっきりさせることが重要。1980年代にインターネットが登場し、さらにAIが台頭してきた今、社会では産業革命が起きている。世の中が大きく変わりつつある今、実はイノベーションのほうが大切だ」(高岡氏)

 では、顧客が諦めている問題をどう発見するか?

 高岡氏は「日本人は偏差値教育しかしていないので、いつも公式と答えを聞きたがる。そんなものはない」という前提を踏まえつつ、思考する際の“ヒント”を紹介した。イノベーションを考える上でまず意識するとよいのは、「新しい現実」を見つけること新しい現実をきっかけに、その後ろで起きている「新しい問題」を見つけていく

 新しい現実とは、しばらくこれ以上変わりようがない状況のことを指し、現代の日本では少子高齢化や働く女性の増加、リモートワークへの移行、核家族化などが挙げられる。新しい現実が、新しい顧客を連れてくる。その顧客が抱えている問題に、変化の本質を捉えるわけだ。

★NRPS法による顧客の問題発見方法

1.誰が顧客か?

2.新しい現実(NR)は何か?

3.新しい顧客の問題(P)は何か?

4.問題のソリューション(S)は何があるか?

イノベーションに関するエッセンスが書かれた高岡氏の書籍『イノベーション道場 極限まで思考し、人を巻き込む極意』
イノベーションに関するエッセンスが書かれた高岡氏の書籍『イノベーション道場 極限まで思考し、人を巻き込む極意』

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3年で売上500億、利益率55%を記録したネスレ日本のイノベーション

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この記事の著者

佐々木 もも(ササキ モモ)

 早稲田大学卒業後、全国紙で約8年記者を経験。地方支局で警察や行政を取材し、経済部では観光や流通業界などを担当した。現在は企業のオウンドメディアの記事企画や広報に携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/01 09:00 https://markezine.jp/article/detail/45208

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