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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

MarkeZine Day 2024 Spring

業種業界を問わず、みんな立ち返ることができる「マーケティングの基本」/ブランディングとお金の話も

そのコンセプトは、コンセプトになっているか?

髙口:さて、「ベネフィット」という言葉が出てきました。我々マーケターは、コンセプトを書くという作業を比較的よく行います。メンバーが出してきたコンセプトにフィードバックをすることもよくありますが、マーケティングの歴が浅い方に多いのが、コンセプトが製品アイデアになってしまっているケースです。私は、「コンセプト=Productにより得られるベネフィットを買い手目線の文脈に落とし込んだもの」と定義しているのですが、音部さんは普段「コンセプト」や「ベネフィット」についてどのように教えられていますか?

音部:たしかに、ベネフィットと機能、あるいはProductの区別がつけられるようになると、マーケターとして一人前と言える感じがありますね。

 たとえば、赤ちゃんのオムツで言うと「もれない、蒸れない」は一見ベネフィットのように思えますが、機能にすぎません。一例ですが、ベネフィットは、その機能により「赤ちゃんがぐっすり眠れる」ことです。機能の主語はブランドである一方、ベネフィットの主語は消費者であるという違いがあります。

 また、オムツがもれない、蒸れないから「赤ちゃんがぐっすり眠れて脳の発育によい」「赤ちゃんがご機嫌でママも嬉しい」といったベネフィットも素敵ですよね。同じProduct・機能でも、消費者によって得られるベネフィットは違ってきます。

 複数のベネフィットがある中で、「(このブランドは、このProductによって)赤ちゃんとお母さんに楽しい時間を過ごしてもらうのだ」というように、ひとつ明確なベネフィットを作れるとよいです。それがブランド=「意味」になります。Productや機能はすぐに模倣されますが、ブランドの「意味」は簡単には模倣されません

ブランドがマーケティング効率の向上に寄与する

髙口:1つでもベネフィットに対するパーセプションを磨き抜ければ、その投資の連続によりアセットが蓄積されていきますからね。

音部:そうですね。複数ベネフィットがあるのなら、1個ではなく2個、3個と色々なベネフィットを提示するほうが良さそうに思えますが、マーケティング予算には限りがあります。同じ予算で1つのベネフィットを訴求するブランドと、3つのベネフィットを訴求しなければならないブランドとで比較すると、前者のほうが圧倒的に効率が良いですし、マーケティングROIは高くなります。結果的に利益が大きくなり、成長しやすいのです。

 また、今年の予算は今年の売上のために考えるべきですが、今年の予算で来年以降も稼げたらいいですよね。これがブランドマネジメントが利益を出せる理由でもあり、長く存続しているブランドの強いところです。少々極端ですが、今年は1円も広告費を使わず、過去20年の蓄積で食べているブランドもあるかもしれません。良いブランドは「意味」の蓄積ができるので、結果的に効率が上がるのです。

髙口:ブランドとお金(マーケティング予算)の考え方については、もう少し掘り下げたいです。私は、マーケティング=バックオフィスのない経営と言ったりします。ほぼ経営とニアリーイコールと捉えていますし、マーケティングは事業活動の成果を効率的に上げるための考え方であり手段であると考えています。音部さんは、ブランディングと予算の関係をどう考えられていますか?

ブランディングと予算、そしてパーパスの関係

音部:そもそも、なぜ多くのグローバルカンパニーがブランドマネジメントに必死になっているのか? それは、色々な試行錯誤をする中で「どうもブランドマネジメントの制度が利益を出すのに最も効率的で好都合な仕組みのようだ」と気づいたからです。ですから、「この活動はブランドリフトには繋がるけど利益増には繋がらない」などというのは、一時的にはそうなる可能性があるとしても、ブランディングの本義とはやや異なるように思います。

 せっかくなのでもう少し議論を深めましょう。当然ですが、企業にとって、利益は重要です。投資資源である利益を得られなければ、ブランドの命が危うくなりますからね。それはそうなのですが、稼ぐだけではちょっと足りないかもしれません。

 たとえば人間は食事をとらなければ存続できませんが、ただ食べるために生きているわけではありません。生きていくことに何かしらの意義を見出し、動機づけをするから、毎日ご飯を食べて生きていこうとするわけで、ブランドも同様なのだと思います。

 持続的に利益をあげないと、会社からの投資が止まってしまうので、ブランドが存続できなくなってしまいます。でも、それだけでは生き長らえられません。そのブランドが世の中にどう役立っているかを明確に示さなければ、長期的な存続が難しいということが、ブランドマネジメント制度の進化とともにわかってきたんですね。それこそがパーパス、日本語で言うと「大儀」あるいは存在理由です。総じて、強く永続的なブランドを創造するためには、利益とパーパスの両方が必要です

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マーケティングファネルに囚われず、顧客の感情を見るべき

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/04/11 09:00 https://markezine.jp/article/detail/45235

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