IPv6に関する情報が浸透していない現状
JANOG(日本ネットワーク・オペレーターズ・グループ)は、1997年に設立された日本のネットワーク技術者のコミュニティで、主にインターネットのオペレーションに関する事項を、メーリングリストおよび年2回のミーティングで議論している。JANOG22ミーティングでは、品川グランドコモンズのTHE GRAND HALL(東京都港区)に約400人のネットワークエンジニアが集まり、ネットワークオペレーティング上の課題について話し合った。
なかでも現在利用されているIPv4アドレスの枯渇問題【注1】は長らくの検討課題となってきたが、今回はアドレスの枯渇スケジュールが現実的になってきたことを受け、これまで主にネットワーク接続技術者によって議論されてきたIPv4からIPv6への移行について、エンドユーザー向けウェブサービスの現状と展望を議論するために企画された。
パネラーとして参加したのは、ニコニコ動画(夏)などを提供するドワンゴでネットワークの設計・運用を行っている佐藤哲也氏、株式会社paperboy&co.技術責任者の宮下剛輔氏、ライブドア技術担当執行役員の伊勢幸一氏。
まずドワンゴの佐藤氏は、IPv6対応には「断絶」があるとし、ハードウェアの面でまだ未対応品のネットワーク機器が多いという問題を指摘した。ハードウェアについてはライブドア伊勢氏も、IPv6サービスを提供しようとしたときに「いま目の前にあるルータ」を使おうとしても、意外に対応している機器が無いと語っている。
また機器が対応していても、安定運用が可能なのかどうかのノウハウがないことも問題として挙げられた。ノウハウなどIPv6に関する情報は全体としてウェブサービス事業者に伝わっていないのが現状で、paperboy&co.の宮下はIPv4アドレスの枯渇スケジュールもこのパネルがあるまで見えていなかったといい、データセンターなどとも情報を共有できておらず不安があると語った。
【注1】IPv4アドレスの枯渇問題
APNIC(アジア太平洋ネットワーク情報センター、Asia Pacific Network Information Centre)のジェフ・ヒューストン(Geoff Huston)氏のレポートによると、2011年にはIANA(インターネット割当番号局、Internet Assigned Numbers Authority)が新規に割り当てるIPアドレスの在庫が無くなることが予測されている。