2024年は新たなストリーミング(番組)元年
今回、WalmartはVIZIOの広告ビジネスモデルに注目し、事業強化へ向けた買収を行った。
「スマートTV機の販売」セグメントはVIZIOの売上の主軸だが、営業利益では約10億円の赤字部門である。その本業赤字を上回るセグメントが、各家庭のオプトインアカウントへの「広告配信」部門だ。この部門が約500億円の営業利益を生み出し、会社全体が営業黒字になるという、「(VIZIOの)企業体」をWalmartは買収したのだ。
VIZIOは営業黒字をもたらす広告主アカウントを約500社保持しており、これらは今後「Walmart Connect(Walmartのデジタル広告プラットフォーム)」と融合される。さらにVIZIOから家庭へ配信されるコンテンツ配信アカウントもWalmartが吸収する。まるでハリウッド映像放映の広告営業と、視聴者の自宅までの宅配機能を合わせ持つ事業が創造されるようなイメージだ。
Walmartが吸収する広告主は既存顧客(店舗の棚でCPG商品を販売するブランド)だけではない。医療サービス、金融、保険、車移動など、Walmartの「棚の向こう側」にいる潜在企業が逆流入してくる可能性がある。
たとえば「そろそろ歯科検診、眼科検診はいかがですか」「ペットフードのオーダーありがとうございます。旅行時にはペットケア付きのホテルでお預かりできますよ(+動画)」のように、ストリーミング視聴のコンテンツと連動し、家庭内での生活スタイルに溶け込んだリテールが可能になっていく。
大前提として、Walmart(やAmazon)は、優良な番組コンテンツの提供だけでなく、宅配機能を並行して充実させている。「TVとスマホ+リビングと玄関までのセット申し込み」のサブスクにて生活サービスに入ってこれるのは、その地盤ゆえだ。
「リビングと一体化」するサービスが拡大していく波がある中で、NetflixやDisney+などの有料(優良)ストリーミングサービスが広告付きのメニューを標準化させたのも、図らずの偶然ではない。
現在リテール企業が提唱しているお馴染みの言葉「D2C」「オンサイト・オフサイト」「タッチポイント」「リテール・メディア・ネットワーク」「店頭でのリアル会話」などの視点は、自社店舗や過去の商材が起点となっている。現在の店舗を否定するわけではないが、エンドレスアイルがNetflixやゲームのコンテンツ、ハリウッドコンテンツを入り口として、リビングに広がっていることに気づきたい。
ショッパブル(な)メディアへの移行でエンドレスアイルが推進され、CPG販売を超えたサービスなどがオプトインでお茶の間へ広がる予兆とした。
ブランドセーフティに関心が高い企業ほど、SNS動画よりも「プレミアムな番組に向けて」の出稿需要増のシフトが予想される。ブランドやマーケティング企業は、この新エコシステムを理解した上で、まもなく日本で起こり得る波に備えたい。
