世界初、元祖PDA「ニュートン(Newton)」
光あるところに影がある。栄光の影に数知れぬ「消えていった製品」が存在する。Lカセット、ベータマックス、ドリームキャスト、ピピンアットマーク、PD、HD DVD、NeXT、ローリー、…そして、いま爆発的に話題と垂涎の的となっているiPhoneの影にも、消えていった製品があった。ほかならぬAppleが1990年代に発売していた元祖PDA「ニュートン(Newton)」(以下、ニュートン)がそれである。
ニュートンは1993年から1998年にかけて販売された、世界初のPDA(Personal Digital Assistant、個人用携帯情報端末)である。世界初というのはウソではない。もともと「PDA」という言葉自体が、当時アップルコンピュータのCEOだったジョン・スカリー(John Sculley)による造語なのだ。
大きさは最後期モデルでだいたい21×12センチメートルのサイズだったから、iPhone 3Gの4倍ほどのサイズになるが、ディスプレイ解像度は320×480ドットと同じ。手書き文字認識機能を初めて搭載。完全なオブジェクト指向設計と、パーソナルコンピューティングデバイスの最先端を走ったニュートンだが、残念ながら時代が早すぎ、そして価格が高すぎた。十分な成功を収めないままアップルの経営層交代によって清算される。
そして、新しくアップルのトップに返り咲いたのがスティーブ・ジョブス(Steven Jobs)である。2001年にアップルコンピュータがコンピュータ以外の事業に乗り出して大成功させた音楽プレイヤーは「iPod」だが、そのOSは元のニュートン開発に携わったPixo社によるものだとされている。(現在はJava技術をもってSunに買収されている)また、iPod第3世代まではCPUもニュートンと同じARMアーキテクチャだったのだ。(そしてiPhoneもまたARMアーキテクチャである)
アップルは、直接的にはニュートンとiPhoneの関係を認めてはいないが、直感的なタッチ入力によるパーソナルコンピューティングデバイスの系譜は、意外な形でいま10年ぶりの成功をアップルにもたらしているのかもしれない。