「日清のどん兵衛」が北関東エリアで売上を伸ばせたプロモーションのカギとは
そして、「サークルプランニング」を活用した事例を石口氏は2つ紹介した。1つ目は、日清食品が販売するカップそば・うどんの「日清のどん兵衛」。1976年に発売されて以降、売れ続けているロングセラー商品だ。
そんな「日清のどん兵衛」担当者から2020年に石口氏に対し、群馬・茨城エリアの若年層に対する認知・配荷・売り上げ向上を目的としたプロモーションの依頼があった。北関東エリアでは、競合商品のシェアが高く、両製品の区別がつかない消費者も一定数いるという課題を抱えていた。
そこで、石口氏はプランニング方針として「群馬/茨城エリアの学生が興味を持つ」「地元リテールでの棚取りができる」の2点を定めた。その上で「サークルプランニング」の方法に従って、2つの方針に沿った「日清のどん兵衛」のステークホルダーの整理を始めた。
「日清のどん兵衛を中心として、全国学生、地元学生、学生の親、地元住民、地元リテール、地元の学校、日清営業、地元メディアと取り囲み、それぞれのWinになることを考えました。例えば、全国学生ではガクチカ(学生時代に注力したこと)が欲しい、インターンに参加したい。地元リテールでは、お客様が欲しい商品、地元に貢献したい。といったそれぞれのインサイトを書き出し、全てのWinをつないだ施策を考えました」(石口氏)

超実践型の共創プロモーションを発案、配荷率や売上の爆発的なアップに貢献
「サークルプランニング」を行った結果、生まれた企画が「どん兵衛部長大募集」だ。群馬県、茨城県の高校・大学・専門学校に在籍する学生を対象に、どん兵衛部長を募集。就任した学生には、日清食品の社員とともに地元にちなんだアレンジレシピの開発や、地元リテールとの商談、店頭ツール開発に携わってもらうという超実践型の共創プロモーション企画だ。
このプロモーションは、各種オウンドメディア・SNSでの告知はもちろん、群馬/茨城県内の駅構内や高校・大学の構内に募集パスターを貼り、訴求活動を行った。その後、エントリーした学生に対し、書類選考とオンライン面接を行い、「どん兵衛部長」を群馬/茨城で2名決定した。
実際に学生が担当者と話し合いを重ね、アレンジレシピを考案。また、どん兵衛部長に就任した学生が地元リテールとの商談にも参加し、自身が考えたレシピについて説明した。その結果、地元のスーパーのエンド陳列コーナー、特設コーナー、レシピに使う食材の陳列棚に至るまで、POP掲出に成功した。
「どん兵衛部長の企画はフレーム化し、その後3年にわたって開催できました。エリアも群馬、茨城だけでなく、栃木県、埼玉県、北海道と拡大していき、アレンジレシピもそれぞれの地元にちなんだものを複数開発しました。3年目からは、就任した学生にメディアプロモートやPRにも参加してもらい、地元メディアや全国ネットの情報番組での露出にも成功しています。最終的には、地元の各リテールで配荷率や売上を爆発的に上げることに成功しました」(石口氏)
今回の「どん兵衛部長」の成功には、「ターゲットである若年層をセールスの代表にする共創型フレーム」、「各リテールとの商談にターゲットが立ち会う営業支援戦略」が功を奏したと石口氏は振り返った。