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愛されるブランドの仕組み:ブランド・リレーションシップ入門講座

15年の研究が導き出した「強いブランド」を育てる方法とは?【ブランド・リレーションシップ入門講座1】

消費者とブランドの絆「ブランド・リレーションシップ」とは?

 意外と知られていないのですが、「ファン・マーケティング」の研究にはかなりの歴史があります。ただし、ファン・マーケティングというのは実務用語で、学術的には「ブランド・リレーションシップ(brand relationships)」といいます。

 ブランド・リレーションシップは、消費者が感じる「ブランドとの絆」のことです。あるいは「ブランドへの愛着」と思っていただいても結構です。ブランド・リレーションシップ研究では、「愛されるブランド」について、様々な考察や分析が行われてきました。

 図1は、ブランド・リレーションシップに関する学術論文の動向を示したものです(久保田, 2024a)。ブランド・リレーションシップに関する研究は1990年代後半から現れ始め、2000年以降盛んに研究されるようになりました。

 こうした傾向は現在でも続いていますが、私の感覚では2020年代に入り、その内容はだいぶ成熟してきたように思います。効果的なファン・マーケティングのための理論が、ようやく整ってきたわけです。今こそ、ブランド・リレーションシップ研究で得られた膨大な知見を活用すべき時でしょう。

ブランド・リレーションシップの論文本数

(出典:久保田, 2024a, p.4)
代表的な学術データベースの1つであるEBSCO(Business Source Premier)を用いて、2024年2月12日に作成したもの。ブランド・リレーションシップに関する学術論文の本数は、査読付き学術専門誌を対象として、“brand relationship” “brand relationships” “self brand connection” “self-brand connection” のいずれかが含まれている論文を検索することで算出

愛されるブランドの仕組みを知る5つのポイント

 ブランド・リレーションシップに取り組むには、愛されるブランドの仕組みを知るのが近道です。愛されるブランドの仕組みを知るのは、さほど難しいことではありません。ブランド・リレーションシップ(ブランドとの絆)について、5つのことを理解するだけです。

  1. ブランドとの絆とは何か?
  2. 顧客はどのくらい絆を感じているのか?
  3. 絆が形成されると、何が起きるのか?
  4. どうして絆が形成されるのか?
  5. 絆だけが大切なのか?

 まず、当たり前ですが「ブランドとの絆」が曖昧では、絆の形成には取り組めません。そこで、ブランド・リレーションシップというコンセプトについて理解を深めます。

 次に、自社ブランドのユーザーは、「どのくらい絆を感じているか」を知る必要があります。ブランド・リレーションシップの強さの測定です

 3つ目は「絆の効果」の整理です。もし、ブランド・リレーションシップが自社に利益をもたらしてくれないならば、それを育成したり維持したりする意味はないでしょう。

 4つ目は「どうして絆が形成されるのか」の解明です。ブランド・リレーションシップの形成メカニズムがわかれば、マーケティング活動を効果的に進められます。

 最後は「絆だけが大切なのか」を検討することです。ブランド・リレーションシップを形成してファンを育成するだけでなく、新規顧客を獲得したり、ごく一般的なユーザーを維持したりすることも、重要なマーケティング課題です。これらのバランスをどのようにとるかは、戦略的な資源配分といえるでしょう。

 言葉にすると複雑そうに見えますが、図にしてみるとごく単純な仕組みであることがわかります(図2)。愛されるブランドの仕組みを知るには、たった5つのことを理解するだけです。

愛されるブランドの仕組み

 強いブランドを手に入れるには、じっくり構えて、論理的に行動していくことが求められます。私は、これまで約15年にわたり、ブランド・リレーションシップの研究を行ってきました。そして先日、その成果を一冊の本にまとめました(久保田, 2024b)。

画像を説明するテキストなくても可
ブランド・リレーションシップ』(著)久保田進彦、有斐閣、6,160円(税込)

 ちょうど良いタイミングなので、MarkeZineの読者の皆さまにも、本連載を通じてそのエッセンスをお届けすることになりました。次回以降は、上述した5つのポイントそれぞれについて、わかりやすく説明していきます。ブランド・リレーションシップの研究結果を活用していくことで、強いブランド作りを一緒にかなえていきましょう。

【参考文献】

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この記事の著者

久保田 進彦(クボタ ユキヒコ)

青山学院大学 経営学部教授、博士(商学)(早稲田大学)。日本商業学会学会賞受賞(2007年論文部門 優秀論文賞、2013年著作部門 奨励賞)、公益財団法人吉田秀雄記念事業財団助成研究吉田秀雄賞受賞(2010年度、2016年度)。最新作は『ブランド・リレーションシップ』(有斐閣)他著書多数。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/08/23 08:00 https://markezine.jp/article/detail/46055

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