リアルすぎる唇の広告 多感覚に訴えかけて話題化
次に紹介するのは、日本コカ・コーラが展開するエナジードリンクブランド「リアルゴールド」が、2024年5月に展開した「このおうきなプニプニの唇は誰だ!?」の立体広告です。
同広告で特筆すべき点は、大きな唇。私も現地で実際に見ましたが、光沢感が妙にリアルさを出しつつも、実際に触ってみるとプニプニしており非常に不思議な感触でした。

「リアルゴールド」と大人気TVアニメ「キングダム」のコラボ企画の一環として掲出された同広告は、広告自体が謎解き企画の第1問になっていました。SNSでは謎解きの回答が飛び交ったのと同時にリアルすぎる唇に多数の反響が寄せられ話題となりました。また、SNSの投稿を見ていると、この謎がキングダムファンであれば一目でわかる絶妙な難易度であった点も投稿を加速させた要因であったようにも感じました。
特殊演出といえば、2024年2月に実施されたソニー・ミュージックジャパンインターナショナルの「#ニュー懐メロ」の広告もおもしろい事例として挙げられます。

同広告では、クリエイティブ内に描かれた音楽プレーヤーの再生ボタン部分にスマートフォンでタッチすることで、CDショップと音楽プレーヤーをイメージした特設サイトに遷移。サイト上での楽曲試聴や、SNSでの共有ができる形となっていました。
選定されていた楽曲は「#ニュー懐メロ」ということで一昔前のもの。「教科書よりも、記憶に残った文法があるあなたへ」といったテーマが掲げられ、それにマッチした楽曲が選定されていました。OOHから楽曲を聞けるという体験を促す仕掛けは非常にユニークだったと思います。
多くの通行人が広告には無関心な状態であることを考慮すると、他社と差別化する意味では、これらのような特殊な演出をする重要性はより際立ちます。特に、上記二つのような視覚だけでない複数の感覚に訴えかける仕掛けは、見た人に強力な印象を与える非常にユニークな手法と言えるでしょう。
想定する展開を裏切る広告
次に紹介するのは、2024年4月に実施されたマクドナルドと名探偵コナンの広告です。日本マクドナルドは4月中旬から、定番人気メニュー「チキンタツタ」と新作「油淋鶏チーズチキンタツタ」を含む限定商品の販売を開始しました。同広告は、この販促キャンペーンの一環として実施されたものです。

同広告では、名探偵コナンのキャラクター、毛利蘭の特徴的なヘアスタイルを矢印に見立て、マクドナルド店舗の方向を指し示してします。このデザインは、鮮やかな赤色と相まって強烈な視覚効果を生み出しSNSで話題になりました。キャラクターが持つ特徴を予想外な形で活かしたおもしろい広告です。
コラボと言えば2024年3月に展開されたNetflixドラマシリーズ「三体」とウェザーニュースのコラボ広告もおもしろい事例でした。

同広告では、ウェザーニュースで気象キャスターを務める駒木結衣(こまきゆい)さんが、明日の天気を伝えようとすると突然「明日は……来ないでしょう!」と発言。画面にエラーが表示され、作品の予告が始まる内容となっていました。

動画をよく見ると、テロップの部分が文字化けしていたり、気温が5,499℃となっていたりと、おかしなポイントはいくつかありますが、初見では気づかずに驚いた方は多かったのではないでしょうか。
これら二つの事例のように、広告を話題化させるには既存のイメージや概念を新たな視点で捉え直す発想も重要です。接触者が想像する展開を裏切ることで、強烈な印象を与えることができるでしょう。