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タイパ、個人志向、希少性……押さえておきたい「5つの消費トレンド」を男女コーホート分析でひも解く

男性は“新しい世代”ほど、女性は“若い時”ほど美容意識が高い

 まずは「1.ウェルネス(心身の健康維持・増進だけでなく美容も)」についてです。最近では「ボディメイク」といった考え方も浸透し、心身の健康維持だけではなく、外見の美しさまで意識するようになっています。また、若年層を中心に「男性のメイク」といった行動も広がってきました。そこで、「他人からきれいに見られたいと思う」という項目を男女それぞれで、「世代」「加齢」「時代」の3効果に分解してみた結果が図表3です。

 数値がプラスであれば平均よりも該当率が高く、逆にマイナスであれば平均よりも該当率が低いことを表しています。

【図表3】他人からきれいに見られたいと思う
【図表3】他人からきれいに見られたいと思う(クリックすると拡大します)

 男性は新しい世代ほど、また女性は若い時ほど「他人からきれいに見られたい」≒美容意識が高くなっており、男女で大きな違いがあることがわかります。

 近年、男性の化粧品市場が成長しているのも納得の結果です。また、昨年に話題となった「日傘男子」も、「日焼けによる肌へのダメージを防いで肌のコンディションを保ちたい」というニーズの表れです。一方で、女性は化粧品や美容サービスだけではなく、ボディメイクへの関心が広がり、プロテイン市場が拡大しています。

可処分所得が少なくなる「年齢」や「時代」でコスパ意識が強まる

 次に「2.コスパ(支払った金額に対してどれだけ価値を感じたか)」についてです。図表4は「商品を買うときに、本当に必要なものかどうかを考える」という項目のグラフです。

【図表4】商品を買うときに、本当に必要なものかどうかを考える
【図表4】商品を買うときに、本当に必要なものかどうかを考える(クリックすると拡大します)

 男性は古い世代ほど、女性は新人類~団塊Jr.が慎重にコスパを吟味すると、こちらも男女で違いがあります。

 男性の古い世代において該当率が高い理由を探ると、第二次世界大戦の最中に生まれたキネマ世代~戦後直後に生まれた団塊世代は、戦中・戦後の物不足や貧しい時代を経験しているため、消費に対して慎重で「もったいない精神」が強く、物を大切にして長く使う傾向があります。

 また男女ともに、大学生や社会人生活を始めたばかりで収入や貯蓄が少ない20代と年金生活が始まる65歳以上、そしてコロナ禍や物価高が続く2020年以降に、コスパへの意識が高まっています。やはり可処分所得が少なくなる「年齢」や「時代」で財布の紐が固くなることが分かります。

 最近、廉価な衣類や家具・インテリア用品を取り扱う専門店、100円や300円の均一ショップ、ドラッグストア、「毎日安い」を掲げる食品スーパーといった衣食住でお得感を訴求するお店が好調ですが、この「時代」によるコスパ意識の高まりを受けていると言えます。

生活のあらゆるシーンで高まる「タイパ」意識

 続いて、「3.タイパ(費やした時間や手間に対してどれだけ価値を感じたか)」についてです。図表5は「夕食に総菜や冷凍食品を使うことがある」という項目のグラフです。

【図表5】夕食に総菜や冷凍食品を使うことがある
【図表5】夕食に総菜や冷凍食品を使うことがある(クリックすると拡大します)

 男女ともに新しい世代ほど、また時代を経るほど、惣菜や冷凍食品を使うようになっています。この背景には、共働き世帯や働くシニアの増加により可処分時間が減ったことで、「料理する時間を短縮、もしくは負担を軽減したい」というニーズがあります。この需要を取り込むために、スーパーやコンビニで惣菜や冷凍食品の売り場が広くなっています。また、ミールキット、カット野菜、液体だしの市場規模が拡大していることからも、「プロセスにあたる料理」よりも「結果にあたる食事」のパフォーマンスを重視するタイパへの意識が高まっていることが分かります。

 料理の他にも、タイパへの意識が高まっている事象は、生活のあらゆるシーンで見受けられます。

  • 口コミやSNSの評価を参考にして効率的に消費や体験をする
  • ネット通販・宅配、キャッシュレス決済、セルフレジで買い物の時間を短縮する
  • オンラインでの動画・音楽・ゲームの利用、会議、学習、金融取引で移動時間を短縮する
  • ショート動画や倍速再生を使って短時間で欲しい情報を得る

 逆に、年金生活が始まると節約意識が高まるため、65歳以上の女性は惣菜や冷凍食品を控える傾向があります。お金と時間・手間のどちらを優先するか、究極の選択を日常的に迫られている様子が伺えます。

 コスパもタイパも、すべては「ゆとり」が失われていく中で情報武装して対抗しようとした結果、「失敗したくない心理」が強くなっているのかもしれません。

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男女ともに近年になるほど「個人志向」が加速

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この記事の著者

鶴田 育緒(ツルタ イクオ)

株式会社インテージ カスタマー・ビジネス・ドライブ本部 ナレッジ&インサイト開発部 プリンシパル・アナリシス・デザイナー

株式会社インテージに入社以来、パネル/アドホック/データサイエンス/コンサルティングなどリサーチ&アナリシス全ての分野でソリューションやコンテンツの開発を担当する傍ら、幅広い業界・150社を...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/07/10 09:30 https://markezine.jp/article/detail/46123

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