男女ともに近年になるほど「個人志向」が加速
次に、「4.個人志向」についてです。図表6は「人づき合いをあまり積極的に広げたいと思わない」という項目のグラフです。

男女ともに近年になるほど、人づき合いへの意識が希薄化しています。この背景には、2004年頃から急速に浸透して定着した「自己責任」という価値観や、SNSによるオンラインでの交流の影響が考えられます。これ以前は、社会全体の問題と捉えたり、リアルなコミュニティ以外は人づき合いの手段が限られたりしていました。
また、「2014年の消費税8%への引き上げ」と「コロナ禍や物価高」によって可処分所得が減少したタイミングで人づき合いへの意欲が減退し、個人志向の考え方が加速したことが分かります。コスパやタイパと同様、「ゆとり」が失われていく中で、やや閉鎖的な価値観が広がっているのかもしれません。
この個人志向は、家族の中でも個人を尊重し合い「ひとり時間」を求めることで、「おひとり様消費」につながっている側面もあります。ひと昔前であれば、一人で行くことに抵抗があった焼肉、カラオケ、キャンプ、旅行などを一人で利用する人が増加している要因でもあるのではないでしょうか。
新しい世代ほど「希少性」を求める
最後は「5.希少性」についてです。図表7は「品切れしている、もしくは、売っているお店の少ないものに弱い」という項目のグラフです。

男女ともに新しい世代ほど、希少性が高いものに惹かれるようになっています。モノや情報が溢れて商品の差別化が難しい現代は、コスパのよい商品を手軽に入手できるようになったことで、持っている物が他者と被りやすい傾向にあります。そんな中、デジタルネイティブなZ世代はSNSで情報を収集し、「“悪目立ちしない”ように気を付けながらも、個性を演出できる”失敗しない”アイテムを選びたい」というニーズがあるのかもしれません。
希少性の高い商品やサービスが求められている事象はいくつも確認できます。
- 店頭で入手できなくなり話題になったビールや乳酸菌飲料の新商品
- アニメ、ゲーム、アイドル等とのコラボ商品のヒット
- 高値で転売されるブランドや商品
- 即完売してしまう入手困難なイベントのチケット
- 何ヵ月先まで予約が取れない飲食店や宿泊施設
おわりに
ここまで、コーホート分析を使って生活スタイルや価値観を構造化し、5つの潮流を読み解いてきました。
今回は、あえて分かりやすく顕在化している項目をピックアップしましたが、3つの効果に分解することで、何となく感覚的に分かっていたことを定量的に明らかにできたり、これまで時系列の変化≒「時代」効果は分かる一方で、「年齢」と「世代」の効果を混同しがちだったことが実感できたりと、このアプローチの独自性や読み取れることの広がりを感じていただけたのではないでしょうか。
最後に、読み解いた潮流をまとめてみると、「個人ごとに多様化した生活シーンとパフォーマンス意識や感情を捉えた価値を提供すること」がより大切になっていきそうです。
(※1)インテージSCI(R)(全国消費者パネル調査)
全国15~79歳の男女53,600人の消費者から継続的に収集している日々の買い物データ。食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができる。SCI Shopper Indexデータは、このSCIで収集している消費財購入時のレシート情報を基に、日常の買い物金額や買い物頻度などを集計したもの。
※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開していない。