※本記事は、2024年8月刊行の『MarkeZine』(雑誌)104号に掲載したものです
社会価値創出につながる事業推進の在り方とは?
─ 自社の資産を“人材”と定義しアクセンチュアが注力する企業市民活動 事業成長と両輪にする仕組みを聞く
─ LIFULL HOME'S「FRIENDLY DOOR」に学ぶ、社会課題を事業に落とし込むヒント
─ ユーザー・小売・メーカー、誰にとっても便利なリユースを目指すLoopに聞くパートナーシップの重要性(本記事)
─ 社会課題への関心が高いリスナーに自然な文脈で自社の活動を届ける J-WAVEの番組スポンサード
─ 単純なSDGs訴求で生活者は動かない、CSV視点で考える「届く情報発信」
─ 「パーパス買い」はある?博報堂買物研究所が解説する生活者の購買意識
「みんなに便利」が循環型のヒント
──まずは、リユースプラットフォーム「Loop」および、母体であるテラサイクルについて教えてください。
Loop Japanの親会社であるテラサイクルは、21年前にミミズを使った堆肥作りのビジネスから始まりました。ミッションとして「捨てるという概念を捨てよう(Eliminating the Idea of Waste)」を掲げており、現在では使い捨てプラスチック削減を目指し、リサイクル回収、廃棄物活用のイノベーションをけん引しています。
Loopは日用品や食品を再利用可能な容器で販売できるグローバルなリユースプラットフォームです。Loopに参画する商品を店舗で購入したユーザーは、使用後に店舗に設置した返却ボックスに容器を返します。回収された容器は仕分け・保管・洗浄を経て、再利用のためにメーカーに返却されます。メーカーはその容器に商品を再充填して販売するという仕組みです。
私たちがLoopを開発した理由は、循環型のシステムを作る必要性を感じたからです。現在、多くの容器は1回の利用=使い捨てを前提にデザインされています。そのため、リサイクルのコストや原料の価値などに様々な課題があります。やはり、廃棄物を減らす・リサイクルをするためのデザインになっていないこと自体が大きな問題だと捉えたのです。
CO2削減のインパクトの観点から考えると、環境に最もいいことは使い捨てをやめるということ。ですから、循環型のシステムを考えました。
とはいえ、再利用のシステム自体は新しいものではありません。昔は存在しました。でも、なくなってしまった。では、復活するためにどうすればいいか? を考えると、ユーザーにも小売にも、メーカーにも便利であることが大切でした。
たとえば、店舗でドリンクを自分で充填するケース。ユーザーは空き容器を持参して、場合によっては作業のために並ばないといけません。小売店のスタッフは機械が詰まったら対応が求められますし、機械への充填作業が必要です。ユーザーと小売店の負担が大きい。であれば、使い捨ての安くて便利な商品が選ばれます。
そこと戦うために、できる限り便利に、ユーザーが自分で充填しなくてもいいようなシステムを用意しました。メーカーは洗浄された空き容器に再充填して、新しく商品化してから、また売る。すると、ユーザーの負担は減りますし、小売店のオペレーションは普通の商品の販売とまったく何も変わりません。これを私たちはプリフィルシステムと呼んでいます。
容器を再利用するモデルのネックの1つに、ユーザーが容器を返却してくれない点があります。容器が返ってこなければ、メーカーが損をします。そのため、ユーザーには容器代を先に支払ってもらうようにしています。容器に付いたQRコードを専用アプリに登録してもらい、無事に回収できたと確認されると、ユーザーに容器代が戻る仕組みになっています(図表1)。
──誰もが不必要な負担を抱えずに、サイクルがループすることを目指しているのですね。ちなみにLoopはどこで展開されているのですか?
フランスと日本です。フランスでは、カルフールとモノプリが小売店のパートナーです。日本ではBtoCにおいてはイオンおよび、ビューティーアイテムを扱う「style table」と「Ethical&SEA」を運営するフラッグ社が参画してくれています。
BtoBでは2023年4月より、リユース容器を使用した業務用商品販売プラットフォーム「Loop Professional for ASKUL」を開始しました。また、本格始動はこれからですが、酒類販売のカクヤスもパートナーになりました。メーカーサイドに関しては日本ではロッテや大塚製薬、サラヤなど15社が私たちのパートナーです(図表2)。