ICT/デジタル分野中心の市場調査機関のデロイト トーマツ ミック経済研究所は、法人向けの動画・配信ソリューションについて、その市場規模とトレンドを分析する調査を実施。その結果をまとめた「法人向け動画・配信ソリューション市場の現状と展望 2024年度版」を2024年6月に発刊した。
調査では、企業の動画活用を後押しする「動画自動生成ツール」「OVP(Online Video Platform)」「ライブ配信ソリューション」の3分野について、主要ベンダー24社(29製品・サービス群)に対してヒアリング取材が行われた。
法人向け動画・配信ソリューション市場全体のトレンドと中期予測
調査によると、法人向け動画・配信ソリューションの市場規模は、2023年度は前年度比121.3%の513.3億円。2024年度は前年度比123.8%の635.7億円になる見込みだ。
成長の背景として、2023年度以降はアフターコロナの情勢となり、ビジネスでもリアル回帰が進む中で、リアルとリモートを併用したハイブリッドワークが定着したことが挙げられる。それによりリモート環境間や、リモート環境とリアル環境をつなぎ合わせるツールとして動画やライブ配信の活用が進んでいる。
また企業のPR・広報・マーケティングや企業内コミュニケーション用途での動画活用が活発化している。それに加え、生成・配信される動画を企業資産として捉え、経営上のツールとして活用するためのデジタルアセットマネジメントサービスとの連携強化も、成長要因の一つとなった。
2024年度以降は、2028年度まで年平均24.4%増で成長を続け、2028年度には1,529億円市場になる見込みだ。上記要因に加え、ビジネス環境で加速するDX化の推進、動画を活用したマーケティングビジネスの定着、双方向型のコミュニケーションのツールとしての地位の確立、そして生成AIとの連携等による利便性向上といった点が市場成長要因となると考えられる。
動画自動生成ツール市場
動画自動生成ツールは、企業の動画内製を支援し、自動またはテンプレート選択などの簡易的な方法で動画を生成できるツールと定義。同市場の2023年度売上高は、前年度比158.2%の151.4億円、2024年度は前年度比149.5%の226.4億円となる見込みだ。
ペーパーレス化やマーケティングオートメーション推進など、動画を活用した社内業務効率化/マーケティング施策のDX化が進み、動画生成を自動化・簡便化する動画自動生成ツールへの需要が継続的に高くなっている。
OVP市場
OVPは、企業が所有する動画をVOD(ビデオオンデマンド)や、ライブ配信等の形態で配信するためのプラットフォームサービスと定義。同市場の2023年度売上高は前年度比119.2%の151.9億円、2024年度は前年度比122.6%の186.3億円となる見込みである。
ハイブリッドワークの定着や、コロナ禍で動画活用が普及し、エンドユーザーの動画・配信リテラシーが向上したことでシステム導入が進み、堅調な成長となった。
ライブ配信ソリューション市場
ライブ配信ソリューションは、イベントや各種セミナーでのライブ配信について、ユーザーが利用する配信インフラの提供から配信運営までのワンストップ型ソリューションと定義。同市場の2023年度売上高は、前年度比105%の210億円、2024年度は前年度比106.2%の223億円を見込む。
アフターコロナの情勢に移行したことでリアル回帰が進み、ライブ配信自体のニーズが落ち着いたことで市場は微増となった。
今後の展望としてはメタバースなど他領域のプラットフォームとの連携促進や、高品質の配信環境の整備等を通じて、堅調な成長につなげていく。
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