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調査データから読み解く「タイパ」実態 世代間で異なるタイパ意識、2つの行動タイプとは?

Z世代とミレニアル世代では「タイパ意識」が異なる

 対比として、ミレニアル世代は「家事などは、できるだけ並行して行うようにしている」割合が他世代よりも有意に高く、Z世代とは異なる意識を持っていることが伺えます。有意差はないものの、「毎日忙しく、時間に追われている感じがする」割合も他世代に比べて最も高く、「毎日の時間の使い方に満足している」割合は、Z世代よりも10%も低い結果だったことから、ミレニアル世代は物理的に毎日忙しいゆえにタイパを求めざるを得ない状態であり、そのため時間の使い方への満足感が低いのではないかと推察できます。

 また、本調査ではコストパフォーマンス(コスパ)も計測し、タイパとの関係性を分析しました。驚いたことは、Z世代ほどタイパとコスパの相関係数が高く、タイパを重視する人は、コスパも重視していることがわかりました(図表2)。

タイムパフォーマンスとコストパフォーマンスの世代別の相関係数
【図表2】タイムパフォーマンスとコストパフォーマンスの世代別の相関係数(クリックすると拡大します)
(株)インテージ 産学連携生活者研究プロジェクト調べ
ベース:全国/サンプルサイズ:n=5504

 年代別で見てみると、「一定の時間の中で、できるだけ多くのことを楽しみたい、経験したい」「何かをするとき、『使う時間・かかる時間』と『得られる価値』のバランスを考えるようにしている」の割合は、有意差はないものの10代で最も高く、年代が低いほどタイパ意識が高いことが読み取れます(図表3)。年代の影響か、世代の影響か今後の動向も気になります。

タイムパフォーマンスに関する意識調査結果
【図表3】タイムパフォーマンスに関する意識調査結果(クリックすると拡大します)
(株)インテージ 産学連携生活者研究プロジェクト調べ
ベース:全国/サンプルサイズ:n=5504

 昔から「時は金なり」と言われているように、時間はお金と同様に貴重であり、無駄遣いしないように多くの人が時間を大切にしてきました。そのため、根本的な時間を大切にしたい価値観は、世代問わず持っていると思います。

 ところが、Z世代は、時間を無駄遣いしないことはもとより、限られた時間で実りある経験や体験を得たい意識が他世代よりも強いのではないでしょうか。結果的に行動の量・質ともに高まっていることから毎日忙しく、時間に追われていると感じているかもしれません。

 ただし、調査結果の中で40%が「毎日の時間の使い方に満足している」と回答していることから、限られた時間でたくさんの経験や体験をすること、計画することを楽しんでいたり、自ら求めているのではないでしょうか。

 一方で、ミレニアル世代は、毎日忙しいゆえにタイパを意識せざるを得ない状況にあると考えられます。Z世代に比べ、時間の使い方に満足している人の割合が低いこともその表れかもしれません。

 まとめると、Z世代の特徴であるタイパとは、単なる時間の無駄遣いに留まらず、限られた時間で実りある経験や体験を得ることこそが時間対効果が高い使い方と言えそうです。

 それを実行すること、達成されることは、苦ではなく、むしろ予定通りにものごとが進むことを楽しみ、満足感を得ています。ゲームをクリアする達成感の感覚に近いのかもしれません。代表的な行動として、動画の同時視聴、倍速視聴、要約の閲覧が挙げられました。これは、単なるコンテンツ消費ではなく、タイパを意識した行動の量・質ともに高まった結果でしょう。また、Z世代は、タイパ意識が高い人は、費用対効果(コスパ)意識も高いことも特徴的です。

 私が実際に大学へ訪問し、直接話を伺ったところ、コスパ≠安くて良いものではなく、自分が払う費用(一般的に高額・安価は関係ない)に対して得られる価値を真剣に考えている発言もあり、コスパに対する認識にも世代の違いがありそうです。情報過多、コモディティ化の時代、その時々の目的に合わせて、より満足度の高いものを選び取ることは重要なスキルなのではないでしょうか。人生100年と言われる中でも様々なモノやコトがあふれる時代において効率高く楽しむ価値観は、今後も重要視されていきそうです。

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「時短型のタイパ行動」と「バラエティ型のタイパ行動」(青山学院大学・久保田進彦 教授)

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この記事の著者

小林 春佳(コバヤシ ハルカ)

株式会社インテージ リサーチイノベーション部 生活者研究センター 主任研究員

 トビー・テクノロジー株式会社、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所を経て、2019年にインテージ入社。社内外の研究開発や新規事業開発に従事し、行動科学分野の知見を活かした取り組みを行っている。インテージグループ横断事業として、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

久保田 進彦(クボタ ユキヒコ)

青山学院大学 経営学部教授、博士(商学)(早稲田大学)。日本商業学会学会賞受賞(2007年論文部門 優秀論文賞、2013年著作部門 奨励賞)、公益財団法人吉田秀雄記念事業財団助成研究吉田秀雄賞受賞(2010年度、2016年度)。最新作は『ブランド・リレーションシップ』(有斐閣)他著書多数。

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MarkeZine(マーケジン)
2024/08/19 09:30 https://markezine.jp/article/detail/46450

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