パーパス広告は、共感者の購入金額アップに効果が
――パーパスを軸にメッセージングを行う「パーパス広告」は、購買にどのような効果をもたらすでしょうか?
パーパス広告の影響に関しては、その広告を認知しているか/共感するか/実際に購買をしたかといったデータを紐づけて、分析した調査結果があります。具体的には、パーパス広告に対して好感を持った人たちをパーパス共感者と定義し、パーパス共感者とそれ以外の人々の購入率・購入金額のリフト値を分析しました。
分析の結果、違いが見られたのは購入金額のほうです。購入率に関しては、いずれの商品カテゴリーにおいても大差が見られなかったのですが、購入金額に関しては、嗜好性が強い商品カテゴリーを中心に上昇が見られました。たとえば、美容品や飲料は購入金額のリフト値が大きく、トイレタリーなど生活必需品はほぼリフト値が出ませんでした。
総じて、パーパス共感者においても、購入の間口を広げるというよりは、奥行きを広げるほうにパーパス広告は効果をもたらすと分析できます。
パーパス買いの傾向は今後どうなる?
――パーパス買いの傾向は、今後強まっていくと思われますか?
正直なところ、加速度的に傾向が強まることはないと考えています。というのも、ここまでSDGsが社会で話題になっている中でも、ご紹介してきたようにパーパス買いをする人々は全体の1割弱という状況ですから、そもそもこの数年で生活者側の購買意識には大きな変化がなかったという見方が妥当でしょう。
別のデータで、利他・社会性に関する事柄がXで話題にされる量を分析したものもあるのですが、こちらも近年は変わりがなく、どちらかというとダウントレンドです。
1つこれらの要因として考えられるのは、物価高、実質賃金の減少です。近年、生活者の節約マインドは非常に高くなっています。先ほど、10代・60代以外は利他・社会性に配慮する余裕がないのではという推測を述べましたが、これは金銭的な余裕を指しており、パーパス買いの浸透には向かい風が吹いていると思われます。
