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事例を通して見る世界のマーケティング/ブランディングのトレンド

旅行はもはや“生活様式”に?最新調査&5つの事例で「旅行とブランディング」を読み解く


 国内でも“兆し”あるマーケティングの新たな潮流に、業界を先進するブランドはどう向き合っているのだろうか? 世界で100ヵ国以上にオフィスを展開する広告代理店HAVASで日本のエグゼクティブ・ディレクターを担う北市卓史氏が、同社が持つ専門研究チームとそのネットワークを活かし、世界各国の先進的なブランドによる取り組み事例を紹介する本連載。今回は「旅行とブランディング」にフォーカスする。

なぜ私たちは旅行をするのか?生活における存在感は増している

 読者の皆さま、旅行はお好きですか? 日本では外国人観光客が増え、インバウンドの盛り上がりを感じますね。グローバル全体でも旅行者数は伸びており、2024年は世界中で延べ100億以上もの人々が飛行機で移動をすることが予想されています(出典:Airports Council International World「The trusted source for air travel demand updates」)。これはコロナ以前の数字を超えており、来年以降も旅行客の増大が予想されています。

 歴史を紐解くと、旅行は比較的に新しいマスカルチャーであることがわかります。近世では18世紀にイギリスで“グランドツアー”として始まり、その後は一部の裕福な人間に限られた旅行が、移動手段の発達とともに大衆化されていきました。近年では1990年代からのLCCの拡大を契機に、海外旅行がより広く浸透をしてきました。

 直近における観光旅行は、リベンジ旅行という言葉からも一時的なトレンドと見ている方も多いかもしれません。しかし、観光旅行はもはや現代の生活様式として定着してきていると考えられます。HAVAS社の調査によると、プロシューマー層(トレンドを生み出し、社会の消費行動に影響を与える生活者グループ)の80%近くが「旅行は自身にとって必要不可欠なものである」と答えています。また世代間の比較でも、Z世代の三分の二が、自身の生活における旅行の大事さを認知しています。

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 では、なぜ私たちは旅行をするのでしょうか?

 今回の記事では、ブランドのキャンペーンやビジネス事例を見つつ、生活者のなかで存在が増し、今後もマーケットの拡大が想定される旅行に関して、インサイトを深掘りしていきたく思います。

タスマニア州観光局 - TasmanAi

 2024年2月、タスマニア州観光局は、観光誘致を目的とし、イメージ・ジェネレーター「TasmanAi」を発表しました(出典:公式リリース)。その使い方ですが、まず利用者は一般的なAIツールと同じように、Webサイト上の「TasmanAi」にプロンプトを書き込みます。すると、書き込まれたプロンプトの内容に合わせて、タスマニアの豊かな文化や自然を織り交ぜた、オリジナルアート作品を作ってくれるというものです。

 ただ実際には、人工知能の“Ai”が行うのではなく、現地タスマニアのアーティストたちがプロンプトのなかからお気に入りを選び、それぞれの専門分野である、陶芸、アクリル画、油絵、クレヨン画などから、バラエティー豊かなアート作品を制作。最終的には郵送で実物を届けてくれるという仕組みでした。

タスマニア州観光局公式サイト内「TasmanAi」特設ページより

 テクノロジーが世の中に浸透していくなかで、タスマニアの特徴である豊かな自然や伝統を、あえて人工知能をギミックにして伝えることで、表層的なものではなく、本物のタスマニアを体験してほしいという、観光局の意図が伝わってきます。参加者のプロンプトと、現地人のクリエイティビティーが掛け合わさった作品を作ることで、タスマニアとのつながりを感じられる秀逸なキャンペーンとして話題となりました。

 キャンペーンという観点からは、このように旅行先の新たな魅力を伝える内容が、大変有効だと考えられます。これだけGoogleマップが発達した現代でも、実に多くの生活者は「世界にはまだ発見されていない美しい場所がある」と信じており、それが旅行に向かう大きなモチベーションとなっていることがわかります。

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この記事の著者

北市 卓史(キタイチ マサシ)

HAVAS JAPAN 株式会社   Executive Director営業職をベースに、国内と海外にて広告代理店の会社/新規事業立ち上げに従事。2022年より世界149カ国にオフィスを展開する広告代理店であるHAVAS社の日本法人の現職に就任。多様性のある職場や働き方、他国オフィスとの...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/09/13 20:18 https://markezine.jp/article/detail/46596

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