リユースビジネスをマーケターが押さえるべき理由
無名ブランドの安い商品と、高いけれどみんなが欲しがるようなブランド品、あなたならどちらを買いますか?
リセールバリューがある高いブランド品のほうを買って、大事に使ってリユース品として売ればいいか──。これからの時代、このように消費者がリユースを前提に買い物をするのが当たり前になるかもしれません。
今回紹介する書籍は、『リユースビジネスの教科書』(クロスメディア・パブリッシング)です。本書はこれからリユースビジネスに参入したい人向けに、リユースビジネスの歴史や特徴を踏まえた上で、ビジネスとして成功させるポイントを解説しています。
リユースビジネスとは、個人や事業者が所有していたものに対して買い取りや下取りをして、再び販売を行うこと。「二次流通」とも呼ばれ、新品で商品が届けられる「一次流通」と区別されます。
著者の佐藤秀平氏は、小売・リユース業向けのコンサルティングとシステム開発を中心に、中古事業支援を行うNOVASTO(ノヴァスト)の代表取締役社長。自身も学生時代からリユースビジネスに取り組み、船井総合研究所に入社後はリユース専門チームでコンサルタントを経験し、現在の会社を立ち上げたという経歴の持ち主です。
著者は「これから、新品か中古かにかかわらず、自らのライフスタイルや価値観に合わせて商品を選択できるような世の中になっていく」こと。そして、リユースビジネスは「小売業にとって、『選ばれる企業』になるための不可欠な成長戦略になる」ことを提言しています。
実際にリユース市場は右肩上がりで、成長を続けています。市場規模は2009年が1兆1,274億で、2022年には2倍以上の伸びを見せ、2兆8,976億。2025年には4兆円市場になると予測されています(出典:リユース経済新聞)。
既にユニクロや無印良品、ROLEX、ヤマダ電機、ZOZOが続々とリユースビジネスに参入。サステナブルな社会に向けた取り組みとしてアピールする目的もあるものの、やはり収益性でのメリットがあるからこそ、リユースをマーケティング戦略の一つと位置付けて取り組む企業とブランドは増えているのだそう。
中古品がアップルのブランドイメージ向上に寄与!?
「中古があると新品が売れなくなるのでは?」
この不安感は、リユースビジネスへの参入障壁としてよく挙げられますが、誤解だと著者は指摘します。そもそも大量生産・大量消費が良しとされず、物が売れない時代になりつつある昨今。またメルカリをはじめCtoCのリセール市場が存在している以上、中古品は勝手に流通することになります。そのためメーカー企業やブランドは、自らリユースビジネスに参入したほうが、実は利があるとも言えます。
企業がリユースビジネスに参入するメリットを、著者はなんと11個も挙げています。11個のメリットの中からマーケターとして着目したいポイントは「ブランドイメージが向上する」「顧客のタッチポイントが増える」「ロイヤルカスタマーとの関係性が深まる」の3つです。
リユースビジネスがブランドイメージの向上に寄与している例として挙げられているのがアップルです。中古品の認定制度を設け、クリーニングと点検を施し必要に応じて純正の交換パーツを搭載した中古デバイスを「認定整備済製品」として流通させています。また「正規サービスプロバイダ」を認定することで、偽物を出回りにくくしているのです。この結果、アップルの商品はリセールバリューが高く、ブランド力も保たれています。
顧客とのタッチポイント増加・関係構築にも効果的
著者によると、新品の販売に加えて買い取り・下取り、中古品の販売を行うことにより、顧客との新たな接点が生まれ、継続的な関係性を築けるそうです。また、リユースビジネスではロイヤルカスタマーの買い替え需要を喚起できる上に、中古品販売のやり取りを通じてユーザーのファン度を上げられる可能性があると言います。企業の成功事例として本書内にインタビューが掲載されているスノーピークと土屋鞄製造所の取り組みを読むと、この2つのメリットをまざまざと感じられるでしょう。
リユースビジネスには多くのメリットがある一方で、もちろん参入障壁や課題も存在します。本書はリユースビジネスを始めるにあたっての「なぜ?」「何のために?」という根本的な問いから、具体的な実装パターンまで、ガイド本として丁寧に解説しています。リユースビジネスに関心のある方はもちろん、時代の流れを掴みたい方にもおすすめです。