何となく離れた顧客に、どうしたら戻ってもらえるか
MarkeZine編集部 吉永(以下、MZ):今回はブランディングについて学ぶ3回目のパートになります。「忘れられないように記憶してもらう」といっても、前回の第17回でお聞きしたように、インパクトがあればいいわけではないのですよね?
西口:その通りです。ブランディングの内容が、便益に紐付いていなければ意味がありません。プロダクトを認知したり、一度は購入したりしても、つい忘れてしまった顧客に便益と独自性の価値を再認識いただくのです。そして使用を通して「価値の再評価(※)」がなされたら、次の購入につながります。
※「価値の再評価」とは、プロダクト使用体験前の初回購入の意思決定時を「最初の評価」として、実際にプロダクトを使用・体験して改めて価値を見出すかどうかを指す。ここで顧客が価値を再評価すれば継続購入(リピート)につながり、再評価されなければ一過性の売り上げに留まる。
MZ:使ってみて「よかった、期待通りだった、また買おう」と思えばリピートに結び付きますね。
西口:はい。その時、便益と独自性が印象に残らないとまた忘れてしまうかもしれませんので、価値の再評価が起こるよう、使用時に便益と独自性をしっかり訴求する必要があります。
ブランディングの「3つの目的」
西口:たとえば、「汚れ落ちがよく、除菌効果がある洗剤」があったとします。汚れ落ちがよいという便益だけでは競合品とそう変わらないので、「除菌効果」という独自性を同時に訴求します。使用時に目にするパッケージ上で、象徴的に青色で「除菌」が記号的に訴求されていれば、次に店頭に行っても「青色の除菌のあれ」と思い出してもらえます。
「除菌効果」に気付くように訴求を工夫することで、効果があるかを意識していただくのです。すると、結果として顧客に競合品にはない満足感や納得感を持ってもらうことができます。
MZ:様々な“記号”でプロダクトを記憶してもらい、買う時に思い出してもらうのがブランディングだとよくわかりました。ただ、それ以上に、ブランディングには単に「売る・買う」以上の情緒的な効果があるように思われている気がします。
西口:確かに、ブランディングでは、プロダクトの記憶化、想起性以上を目的とすることもあります。実際のプロダクトの機能以上によく見せたり、感情的・情緒的に期待や愛着を感じていただいたりすることも可能です。
ここで、ブランディングの3つの目的を紐解いてみましょう。次の通りです。
ブランディングの3つの目的
(1)プロダクトを顧客に記憶してもらい、必要な時に思い出してもらう
(2)付加価値の創出
(3)プロダクト以外の、企業ブランディングや従業員・IRへのブランディング
西口:先にお伝えすると、ここまでは3つのうち目的(1)を主に解説してきました。世の中のブランディングの大半が目的(1)で、その上で(2)と(3)のような目的にも活用できます。