オプトがMeta広告に対する専門性を高めようとする理由
Meta水谷:はじめに「Metaパフォーマンス室」立ち上げの経緯について、教えてください。オプトはサーチ領域(検索広告)に強い印象がありますが、なぜMeta広告に対する専門性を高める取り組みを行うことになったのでしょうか?
オプト黒沢:おっしゃる通り、弊社はサーチ領域に強く、ここを軸に成長をしてきました。だからこそ、ディスプレイ領域(SNS広告など)においては伸びしろがあり、まだまだ自社のポテンシャルを最大限発揮できていないのでは、という思いが以前からありました。
また、広告市場を俯瞰で見ても、ディスプレイ領域のニーズは拡大しており、決して無視できない規模となっています。デジタル広告事業で競争力を高めていくには、サーチ領域だけでなく、SNS広告を中心としたディスプレイ領域の攻略が必須といえるでしょう。
その中でも、Metaにフォーカスした理由は2つあります。1つはMeta広告のトラフィックボリュームや広告取扱高が年々増加し、広告主様からのニーズが増えているということ。もう1つは広告パフォーマンスの高さです。
従来のSNS広告ですと、弊社が扱う業種・商材においては、検索広告と比較するとどうしても直接的な獲得効率が低く、費用対効果が合いにくいという課題がありました。一方、Meta広告については、検索広告より獲得効率が高くなるケースも往々にしてあります。広告効果の高いメディアに、より多くの広告費を分配するのは自然なことでしょう。現場の納得感を得た上で、Meta広告に対する専門性を高めていく取り組みを推し進めていくことができました。
Meta水谷:具体的にはいつ頃から動き始めたのでしょうか?
オプト黒沢:私が広告運用領域を管掌するようになったのが2024年4月ですが、同年5月には意思決定、6月には「Metaパフォーマンス室」を立ち上げることとなりました。既にこの構想は私の中にあり、実際に広告運用する中でも手応えを感じている段階だったので、合意形成は非常にスムーズでしたね。
「Metaパフォーマンス室」とはどのような組織体なのか
Meta水谷:では、「Metaパフォーマンス室」とはどういった組織なのか? 改めて教えていただけますか。
オプト西森:ひとことで言うと「ディスプレイ領域でオプトが勝負し、Meta広告でクライアント様の事業成長にコミットするための専門組織」です。
Meta水谷:チームには、どのような方が集まっているのですか?
オプト西森:メンバーは全員「Meta広告運用者」で、運用によってクライアント様の事業成長に紐づく広告成果を生み出すことを共通ミッションとしています。しかし、メンバーのバックグラウンドは様々です。私のような広告運用一筋の人間もいれば、クリエイティブに強い人間、テックに強い人間もいます。
というのも、広告管理画面を見ることができて、ある程度Metaの知識があるだけでは、クライアントに成果をお返しすることが難しくなってきていると感じています。全員が運用者としてそれぞれの得意分野を共有し合うことで、Meta広告の成果最大化を目指す――Metaパフォーマンス室は、そのようなミッションを持つ組織体です。
たとえば、つい最近も、クリエイティブ出身のメンバーが「Metaパフォーマンス室」に加入しました。彼女が自分で作ったクリエイティブを翌日に自ら配信している姿を見て、みんな触発されたのでしょう。「自分もクリエイティブを作れるようになりたい」という声が挙がり、今ではメンバー全員が実際にクリエイティブを学び始めています。
彼ら彼女らの自主性や領域を超えた成長意欲を尊重したいと思っていますし、それを支援する組織づくりを進めています。
クライアントへの営業にも変化が。既に感じている2つの進化
Meta水谷:「Metaパフォーマンス室」を新設したことにより、どのような変化がありましたか?
オプト西森:一番わかりやすい変化で言うと、新規のお問い合わせは増加しています。
オプト黒沢:そうですね。営業がお客様とコミュニケーションする際も、Meta広告に強いことをわかりやすく説明できるため提案しやすいようです。他にも、既に定性的な面で2つの変化を感じています。
1つは、社内のMeta広告に対する専門性が今まで以上に深まったことです。「Metaパフォーマンス室」を新設したことによって、「Meta広告に対する専門性を高める」という明確なメッセージが全社的に伝播され、活動がよりシャープかつ具体的になってきました。「Metaパフォーマンス室」のSlackチャンネルには100名ほどが参加していますが、日々専門性の高いディスカッションが交わされ、メンバーにナレッジが蓄積されています。このような特定媒体における専門性は、オプトの競争優位性や差別化につながるはずです。
もう1つは機動力の高さです。機能別組織の壁を取り払い、全員が運用者でありながら、プランニングやクリエイティブ制作もするチームを作ったことで、コミュニケーションや意思決定のスピードがアップしました。ともなって、広告運用におけるPDCAサイクルも速まり、結果的に従来の縦割り組織より情報流通量が多く、機動力の高い組織となりました。
独自指標「カチア度」で、クリエイティブと運用をつなぐ
Meta水谷:「Metaパフォーマンス室」での具体的な取り組み事例があれば教えてください。
オプト西森:Metaパフォーマンス室ならではの取り組みとして、社内で「カチア度」と呼ばれる独自指標をつくり、広告効果を検証しています。
これは「新規入稿クリエイティブのうち何本が、従来のクリエイティブより良かったか」を、配信量やコンバージョン総数などの観点から定義した独自指標です。効果的な新規クリエイティブを積極的に発掘しようという考えのもと、クリエイティブと運用をつなぐ共通指標が生まれました。
代理店としては、同じクリエイティブで配信し続けたり、似たようなデザインで更新をかけたりするほうが、単純に楽なのかもしれません。しかし、それでは新たなユーザーにはなかなか出会えません。
Metaとしても、「常に新しいものをユーザーに届ける」というプラットフォーム側の思想があるはずです。このオプト独自の指標は、Metaの思想を運用現場に反映させる指標でもあると考えています。
カチア度を軸にPDCAを回すことにより、成果を出せる新規クリエイティブ本数が増えてくると、全体のCPA改善にもつながってくるのがおもしろいところです。ここには相関性があると思います。効果のあった既存クリエイティブは活かしつつも、手を緩めずに新しい表現を模索し続けたいです。
Meta水谷:それはMetaとしても興味深い指標ですね。Metaでは、AIによる広告配信の自動最適化が進んでおり、クリエイティブこそがターゲティングという世界観になりつつあります。
独自指標を導入した案件では、おそらく成果率の手前にある、新規ユーザーへのリーチ率も高くなるのではないかと推察します。広告主企業にとっても大きなプラスになっていそうです。
オプト西森:まさに、その通りです。たとえば、「定期購入」を訴求したいクライアント様の案件では、新規ユーザーに商品をリーチし続ける必要があります。実際に、定期購入を訴求する中で「既存ユーザーに効果的なクリエイティブは見つかったものの、新規ユーザーのCPAはなかなか下がらない」というケースがあったのですが、独自指標であるカチア度によって改善され始めています。
時間がかかると思っていた人材集めも、予想以上にスムーズに
Meta水谷:社内でこのような専門チームを立ち上げる際、人材集めには苦戦しそうな印象です。どのように声がけを進めていったのでしょうか?
オプト西森:まずは「Metaが好きでずっと運用してきた」という専門性の高い10年選手たちに声をかけ、二つ返事でOKをもらいました。そこからは彼ら彼女らと成果を出しながら、少しずつ社内に啓蒙していこうと考えていたのですが、意外にも若手社員から次々と「やりたい」という声が挙がりました。若いうちから1つの媒体の運用に専念することは、今後のキャリアを考えると勇気の要る決断なのではと思っていたのですが、嬉しい誤算でしたね。
Meta水谷:なんとも嬉しいお話です。ちなみに、なぜ若手社員たちは「Metaパフォーマンス室」を志望してくれたのだと思われますか?
オプト西森:Metaが若年層にとって魅力的なプラットフォームだからだと思います。特にInstagramは若手世代がユーザーとして日常的に触れていることもあり、印象がとても良い。InstagramをはじめとしたMeta広告に集中することに、何も懸念がなかったようです。
Metaでなければ、こんな反応は得られなかったかもしれません。多少は社内のハレーションが起こると想定していたのですが、すんなりとメンバーが集まりました。
広告効果と生産性を同時に高めていける代理店でありたい。
Meta水谷:最後に、「Metaパフォーマンス室」の今後の展望や目標をお聞かせください。
オプト西森:大きな広告費をもつお客様のリプレイスを狙うというよりは、たとえ少額でも「今Metaに注力できていないお客様」の課題に向き合って、一緒に成果を伸ばしていけるチームであり代理店でありたいと思っています。
オプト黒沢:まずは、Meta広告での定量的な成果や事例を創出していきたいと考えています。「サーチ領域に強いオプト」に加えて、「Meta広告に強いオプト」という認知も業界内で得られるような存在になっていきたいと思います。
そのために重要なのが、多くのクライアント様にMeta広告の魅力を感じていただくこと。西森が申し上げた通り、一部の限られた大手企業だけでなく、中堅企業へも良質な広告サービスを届けていく必要があります。
そこでどうしてもネックになってくるのが、クリエイティブにかかる工数や原価です。従来のように制作担当の人力で対応していてはどこかで頭打ちになるため、AIの活用は必須でしょう。ここについてもMetaと一緒に、AIを使った制作・運用手法、特に縦型動画フォーマットの積極的な展開を模索していければと思います。これからも、広告効果と生産性を同時に高め、クライアント様の事業成長を先導する広告代理店でありたいですね。