「空前のグミブーム」の背景を読み解く!
DDD:MarkeZineで掲載中の連載「消費者の欲望を紐解くトレンド事例」、2回目はお菓子メーカーのカンロさんをお訪ねしました。DDD(DENTSU DESIRE DESIGN)は、“欲望”をテーマに消費の研究をしている電通の横断組織で、世の中の様々な事象(トレンド)に隠された消費者の欲望を紐解くべく、日々調査研究を行っています。
そんな私たちが、今回フォーカスしたのが「空前のグミブーム」です。ガム市場が縮小している傍ら、グミ市場は年々成長を続けており、最近は社会現象と言えるレベルで注目が集まっています。今日はグミブームの背景を色々な角度から探りたいと思い、DDDでもトレンド分析を行ってきました。まずは、グミ市場の概況を改めてうかがえますか?
入江:お話にあったとおり、グミ市場はここ数年で急激な成長を遂げています。この成長の理由は分析すると様々あります。たとえば、ガムにかわり「噛む」お菓子としてグミが市民権を得たという見方もありますし、コロナ禍で外に出かけられなかった期間に身近にある楽しみとしてグミがぴったりだったという見方もあります。
また、大きいのはSNSの影響です。パッケージ含め見た目がカラフルで、形や味、食感も色々なので、「私はこのグミが好き」「こんなグミもあった!」など、SNSのネタとしての需要を掴んだことも、グミ市場の拡大を加速させた一因であると考えています。
DDD:そうですよね、我々もコミュニケーションツールとしての惹きが強いのがグミの特徴だと見ていました。グミが大好きな若年層の間では、グミを交換して新学期の気まずさを解消する「グミニケーション」なるものもあるようです(笑)。
比較的若いグミ市場も浸透期から拡散期へ
DDD:先ほど、コロナ禍の需要を掴んだという話がありました。たしかに、矢野経済研究所の調査結果を見ると、グミの販売量・販売額は2021年度以降、急カーブを描く形で成長を続けています。ちょうどコロナ禍のあたりと重なりますよね。ところで、こうした社会現象が起こるまでは、グミ市場はどのような状況だったのでしょうか?
入江:グミは、お菓子のカテゴリーの中では、比較的若い市場です。日本で初めてグミが発売されてから、まだ40年くらいですからね。海外に目を向けると、メジャーブランドの「HARIBO(ハリボー)」は2022年に100周年を迎えていますから、かなり様相が異なります。
元々お菓子カテゴリーの中では後発だったこともあり、日本では、子どもや若い世代から徐々に浸透していきました。そんな中、「グミ=子ども向けのお菓子」というイメージがまだ強かった2000年代に発売したのが「ピュレグミ」です。
DDD:我々もグミの歴史を振り返りながら、これまでの広がり方を見ていたのですが、まさに「ピュレグミ」の登場から潮流が変わっていきますよね。
入江:はい。ピュレグミは「大人がかばんに入れていても恥ずかしくない、大人もおいしいと思えるグミを作りたい」という開発担当者の思いから生まれました。その狙い通り、ピュレグミを入り口に、若い女性の間でグミの購買者が増えていき、ともなって店舗でも小袋形態のグミ売り場がだんだん広がっていったという流れだったと理解しています。
さらにハード系のグミが出てくると、購買者層が男性にも拡大。この数年は、グミと一口に言っても、本当に“多様な”商品が出てきています。