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【特集】令和時代のシニアマーケティング

誰もが自分らしい100年を生きるために UDを推進してきた三菱電機の「らく楽アシスト」

自分の経験値・常識では想像できないペインは「知る」しかない

──若年層のインサイトはトレンド的に押さえられる一方、高齢者のインサイト、特にペインに関するところは想像することすら難しく、当事者にしかわからないことが多々あると思います。らく楽アシストでは、高齢者の痛みや苦しみに日々どのように向き合っているのでしょうか?

中洲:私自身、今年61歳になるのですが、「こういうふうに文字が見えづらくなるのか……」など、年を重ねてわかることがいろいろあります。スマートフォンでSNSを見ているときも、親しみのないワードがたくさん並んでいるので、「このボタンをクリックしたら、全世界に何かが公開されて、取り返しのつかないことになってしまうのでは?」というふうに、どこまであん心で、どこからが危険なのかわからないことがあるんですよ。

 ただ、私は長らく開発側にいたので、そちら側の気持ちもよくわかるのですが、何も意地悪でそうしているわけではないんですよね。開発者は「このくらいはみんな使えるだろう」と、自身の経験値・常識を基に想像して考えるしかないのです。

 結論、自分が経験したことのないペインについては、想像することも難しい。ならば、我々は知識として、それを知るしかないと考えています。

──三菱電機では、そうした知識をどのようにインプットされているのですか?

中洲:社内での啓発については、社内イントラ上にUDに関するガイドラインが公開されており、設計部門の社員だけでなく、営業担当者などみんながアクセスできるようになっています。UDに関する基本的な解説に加え、「なぜそのような仕様にする必要があるのか」を研究所の知見や実験数値で詳しく説明しているのが特徴です。

 三菱電機の家電製品は基本的にこのUDのガイドラインとチェックツールを使って設計・開発されているんですよ。

 ただ、UDのガイドラインに則っていればよいというわけでもありません。これらはあくまで基本的なところですし、実際に製品を開発する際は、ガイドラインには載っていない新しい機能や技術が何かしら入ってきますから、そういったものに対して常に工夫を凝らしていかなければならないのです。

 そこで、三菱電機では、障がいをお持ちの方や高齢者にお越しいただき、プロトタイプを使っていただく「ユーザビリティワークショップ」を実施しています。ただプロトタイプを触って使ってみるだけでなく、たとえば炊飯器のプロトタイプを検証するときは「この炊飯器を使って、あきたこまちを2合炊飯してください」というようにタスクを行っていただきます。

 このワークショップには、「テスター」と呼ばれる専門職の社員や開発者が参加します。私も何度か開発者として参加したことがありますが、本当にいろいろな学びがあるんですよ。最初は自信満々でプロトタイプを持っていくのですが、「ぜんぜん機能が伝わっていないじゃないか」「そこでつまずくのか」「ここまで工夫してもダメなのか」など、まだまだ改善が必要なことをみんな個々で実感するのです。

誰もが自分らしい100年を生きられるよう「ライフソリューション」を届けていく

──そのような地道な活動をずっと続けられてきたのですね。

中洲:ええ。初期の頃からUDの推進に携わってきた身としては、現在、三菱電機の家電製品の基本品質としてUDが定着していること、そこまで社内でUDが浸透したことを非常に嬉しく思っています。一方で、三菱電機のこうした先進的な活動があまり消費者のみなさんに知られていないのは残念だなとも思っており、今後は我々の活動をもっとお伝えしていきたいと考えています。

──最後に、らく楽アシストの今後の展望をお聞かせください。

中洲:人生100年時代と言われる今、三菱電機として現代社会に向き合うと、UDの考え方は欠かせなくなっています。らく楽アシストは、マーケティングというよりは、もはや当たり前に行うべき品質活動です。

 そして現在、三菱電機では、らく楽アシストの上位概念として「#しあわせをシェアしよう。」というブランドコンセプトを掲げています。ここには、「一人のしあわせを家族や周りの人たちと共有(シェア)すれば、社会全体がもっとしあわせになれる」という三菱電機の想いが込められています。家電製品をライフソリューションと捉え、誰もが自分らしい100年を生きることができるよう、豊かな暮らしのお手伝いをしていければと思います。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2024/12/01 09:58 https://markezine.jp/article/detail/46973

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